ARGENTINA,INFLACIÓN HIPER HACIA 2024.03-11-2023.

自国通貨を全く信頼しないアルゼンチン人

アルゼンチンという国は特異な国で、法定通貨はペソであるが、それが国民に全く信頼されていない。その一方で国民の間で信頼されているのが米ドルだ。だから、給与や一般消費財はペソで支払われるが、貯蓄や高額な物への支払いは米ドルで行われている。

市民の頭の中では常に米ドルでの価値が基準になっている。だから経済市場が不安になると、米ドルの価値が高まり、逆にペソがより下落して行く傾向にある。それが更にインフレを煽るのである。

例えば、2020年4月の公式交換レートは1ドル=80ペソであった。それが今年8月には660ペソまで下落、そして10月10日には1035ペソまで下落し、初めて1000ペソを超えたのである。

これはあくまで公式の交換レートであり、実際に市場で交換されているレートはそれよりも高く、そのレートは50以上あると言われている。

例えば、紙幣を持参して旅行するとなると相当のペソ紙幣をもって旅行せねばならなくなる。なにしろ今年最高額として2000ペソ紙幣が発行されたが、それはドル換算すれば今では2ドルにしかならないのである。

しかも高級な商品を購入しようとすればドル紙幣を闇市場で買い求めねばならない。何しろ、政府は外貨が不足しているため、市民がそれを公式ルートで手に入れるのは金額に制限ありとされているが、実際には公式レートでのドル入手は不可能である。

アルゼンチンのこれまでの最高インフレは3079%

今年残り2か月のインフレ上昇率にもよるが、今年のインフレは200%あたり(!)で終幕を迎えることが予測されている。そして現状のままだと来年は350%のインフレという予測もある(10月2日付「ペルフィル」から引用)。

現時点で年末までのインフレの予測が非常に難しいのは、今月19日に大統領決戦投票があるからである。

今年はインフレの上昇率が高い背景にはアルベルト・フェルナンデス大統領への信頼は全くゼロで、政府の経済統制力が弱いということだ。

更に、小麦、大豆、トウモロコシの生産量が800万トンまで干ばつの影響で減産される見通しから180億ドル余りの輸出減が予測されている。それでなくても、輸出が相対的に少ないアルゼンチンでは主要輸出品目の生産量の減少は大きな打撃になる。それによって外貨もさらに不足する。またエネルギー資源の値上げは電力や輸送費などの値上げに繋がっている。これらの事情がインフレの上昇を煽ることに結び付いているのである。

そもそもアルゼンチンがインフレ慢性国であるというのは良く知られたことである。これは上述したように、ペソとドルが市場で同時に流通しているという複雑さと政府の補助金などへの歳出が多額で常に財政赤字であるということだ。それを補うのに紙幣を新たに発行するということでこれまで政府は経済を成り立たせていた。