また、興味深いことに脳の劣化防止に効くのは、脳トレや家庭でのスキル使用ではなく、仕事でスキルを使うことだと書かれている。具体的にはスキルの維持や向上に2倍の影響を持つ。
家庭や脳トレでは、仕事ほどの高度なスキルや即応力が求められない。筆者は子供が生まれてからは、日々仕事以上に家事育児の比重が大きい生活を送っている立場なのだが、その経験からもよく分かる。
どんな仕事にも期限、責任、取引先が存在する。現在、筆者は4冊目の商業出版の本を執筆している。日々、編集者と打ち合わせをしながら原稿を書き、雑誌の取材に対応するための資料を集め、作成している。こうした生活を送る上で、意識しないといけないことは山のようにある。
自分の意見は本当に正しいか? 客観的に説得力を感じる伝え方になっているか? 先方の期待値を超えられているか?
こうしたことに悩み、時には苦しみ、なんとか仕事をこなしている。正直、これほどまでに頭を使い、調べ物をし、多面的に考えて常識を疑い、主観を外して客観的に思考する経験は仕事以外ではあり得ない。仕事は自分を成長させてくれている感覚は非常に強い。
年を取って能力低下が心配な老人は少なくないが、漢字ドリルや脳トレの算数ドリルを解くくらいなら、仕事をすることを勧めたい。仕事なら強制的に能力を使うことになるし、さらにお金までもらえて先方からも感謝される。コスパはまさしく最強である。
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日々、仕事をしていると壁にぶつかり、時に夜も枕を高くして眠れぬほどのピンチと感じることもある。だがこのピンチに対して、プレッシャーとともに不思議なほどワクワクする自分もいる。このピンチが自分を成長させてくれると感じるからだ。どうやらこの漠然とした直感は正しかったようである。人は仕事によって社会性を維持しているのだ。
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