黒坂岳央です。

これまで人は中高年に入り、老化することで能力は自然に衰えていくと広く信じられてきた。

しかし、年齢と認知能力についての論文、Age and cognitive skills: Use it or lose itによると仕事や日常生活でスキルを頻繁に使用する人は、「能力の劣化は加齢ではなく、スキルを使わなくなることが主要因」と結論付けている。これは中高年はスキルの使用を止めてしまうと、ドラスティックにスキルが衰えてしまうということを意味する。

我々は本論文のタイトルにあるように「Use it or lose it(使うか?さもなければ失う)」という現実を突きつけられている。

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仕事をやめたら復帰が難しくなる

「仕事=お金」と考える人は少なくない。だが、お金を払っても得られない価値を我々は仕事から得ている。人間関係、社会性、仕事のスキル、不確定性への耐性などだ。こうした複合的な能力は我々に社会性を与えているのだ。

本論文によると、「加齢するほどスキルを使わなくなった時の劣化が著しい」とある。これは仕事をやめたら復帰が難しくなる、ということを意味する。若い時はそうではないが、中高年が仕事をやめてしまうと再就職のハードルが一気に高くなるため、復帰が難しくなる片道切符になるのだ。

長期間無職になり、仕事をやめてしまうと精神的にも仕事に応募する気力や自信がなくなってしまうという話がある。これはその仕事で必要なスキルが錆びついているというだけでなく、職場での人間関係に上手に対処する能力も落ちていることを潜在的に自分でもわかるためだ。

昨今、FIREがブームになっているが、いざFIRE生活に入りインフレや株の下落などで仕事に復帰するにも中高年以降は非常に難易度が劇的に高くなってしまう。やはり、たとえ細くてもいいから仕事は完全にはやめない方が良さそうだ。

脳トレや家庭より仕事こそ一番脳に良い