もしも建築材料や防具が「圧縮されるほど強くなる」特性を持っていたらどうでしょうか。

そんな未来的な材料が、深海に住む海綿動物からインスピレーションを得て誕生するかもしれません。

オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)の研究チームは、深海に生息するカイロウドウケツ(学名:Euplectella aspergillum)の骨格構造を模倣し、新たな材料を開発しました。

この特殊な構造は、従来の衝撃吸収材や構造材を超える驚異的なエネルギー吸収能力を持っています。

研究成果は、2025年1月2日付の『Composite Structures』誌に掲載されました。

目次

  • 海綿動物「カイロウドウケツ」の特殊な構造からヒントを得る
  • 「圧縮したら横方向に縮む」新材料を開発

海綿動物「カイロウドウケツ」の特殊な構造からヒントを得る

海綿動物は、世界中の海に広く分布する単純な多細胞生物ですが、その骨格構造は驚くべき耐久性を持っています。

その中でも特に注目されるのが、深海に生息するカイロウドウケツ(学名:Euplectella aspergillum)です。

画像
深海の海綿動物「カイロウドウケツ」 / Credit:Wikipedia Commons

カイロウドウケツは「ガラス海綿」とも呼ばれ、その骨格はガラス質の繊維(シリカ)でできた繊細な格子構造を持っています。

一見脆そうに見えるこの構造ですが、極めて高い耐久性と柔軟性を兼ね備えており、格子の中に斜めに補強材が組み込まれることで負荷を分散する特性を持っています。

さらに、海底の過酷な環境でも崩壊しないという特長もあります。

画像
カイロウドウケツのガラス状の繊維 / Credit:Wikipedia Commons

この特殊な骨格に着目したRMIT大学の研究者たちは、カイロウドウケツの構造を模倣することで、高性能な新材料を作れるのではないかと考えました。