その中で首相が「受けることばかりやると国滅びる」と述べたのは本音が出たな、と思うと同時に相当苦しい心境にあると感じました。

先日、所属する団体のセミナーで東大名誉教授の御厨 貴氏の1時間にわたる講義があり、非常に興味深く話を聞かせて頂きました。御厨氏は政治学の第一人者であり、今回の講義では派閥政治について述べられました。端的に言えば自民党は派閥ありきの政党運営であり、それぞれの派閥から順番に首相につく仕組みがあることで党内活性化が起きていたと。ところが派閥の歴史を作った池田隼人氏の宏池会から始まる「首相の交代制度」を同じ宏池会の岸田氏が中途半端に消滅させた意味は大きいと述べています。

私が「自民党の時代ではない」とか「割るべき」と述べている背景にはこの暗黙の首相交代制=短期間で首相が変わることを容認する時代ではないという意味もありました。あたかも400メートルリレーで走者が決まっているような政治なのです。その中で自民党の基礎力と思われる派閥が中途半端に解消されてしまい、党内力学がさっぱりわからなくなったことが大きいのです。

これが首相のボヤキの背景だとみています。国会の委員会で自民党の佐藤正久氏からも高額医療制度に疑義の声が上がったのは首相にとって相当痛手だったでしょうし、見ている国民からもおやっと思ったでしょう。

政治的に耳障りの良いことばかり出来ない=ポピュリズムからの離脱ののろしなのでしょうか?確かにトランプ政権においてはDOGEが紅衛兵の如く振舞っています。ポピュリズムからの猛烈な巻き返しです。私からすれば「首相は仮にぼやきたくてもそれを言っちゃおしまいよ」と申し上げます。世の中、常に反対派はいるのです。100人が全員賛同などということはあり得ません。

では反対派をどう説得するのでしょうか?飴とムチの使い方次第なのですが、ポピュリズムはいかにも飴だけだったのです。バイデン政権や岸田政権などはその典型。少数与党になった自民党も野党の言うことを聞かざるを得ず、結果として飴だらけになるのです。