400年に及ぶ宿題が解けました。
2023年に英国のブリストル大学によって行われた研究によって、400年前に錬金術師が作ったとされる世界初の高性能爆薬が、なぜ紫色の煙を発するのかが解明されました。
日本語では「雷金」と呼ばれる爆薬は、金をベースにアンモニアなどさまざまな物質を材料の混合物で構成されている極めて不安定で爆発しやすい物質であり、多くの錬金術師を爆発事故に巻き込んできた歴史を持っています。
古の錬金術師が残した謎を、現代科学はどのように解決したのでしょうか?
今回はまず最初に錬金術の歴史について軽くまとめ、次ページ以降で雷金の謎や研究成果について紹介していきたいと思います。
研究内容の詳細は2023年10月にプレプリントサーバーである『arXiv』にて公開されました。
目次
- 錬金術の歴史「古代から現代科学への飛躍」はいかにして起きたのか?
- 人類初の高性能爆薬「雷金」は紫色の煙を発生させる
- 煙の中にはナノサイズの金粒子が含まれている
錬金術の歴史「古代から現代科学への飛躍」はいかにして起きたのか?

錬金術は古代から中世にかけて、科学的知識がまだ十分に発達していなかった時代に、自然界の秘密を解明しようとする試みでした。
錬金術はその名の通り、主に卑金属から貴金属(特に金)を練り出すことを目指していました。
しかし他にも様々な物質や人間の肉体や魂をも対象として、それらをより完全な存在に錬成することも含まれています。
たとえば老化や病気を克服し、永遠の若さや不死をもたらすとされる伝説の薬「エリクサー」やあらゆる病気を治すことができるとされる万能薬、人間の肉体と魂の錬成をはじめとした人工生命(ホムンクルス)の創造なども目的の1つとされていました。
錬金術の起源は、古代エジプトの神秘主義や古代ギリシアの哲学、特にアリストテレスによる四元素説にまで遡ります。