なぜこうなったのか。維新については、大阪と永田町の二元体制が混乱して、国政政党の体をなしていない。特に前原氏が自民党と握ったあと、党内の突き上げを受けて執行部があわてて中身のない「社会保険料の4兆円引き下げ」を打ち出したが、国対は動かず、前原氏は党内で浮いてしまった。各政治家はそれなりに一生懸命やっているのだが、党としてはバラバラの無能な働き者である。
特に前原氏は国民民主党が予算案に賛成したことを批判して離党しながら、今回は率先して予算案に賛成し、結果的には崖っぷちの石破政権を救った。前原氏はこれまで数々の党を壊して「死に神」とも呼ばれ、今回も国民民主党との協調の障害になった。
他方の国民民主は、玉木氏が役職停止になって榛葉幹事長が党内を仕切り、それなりに一貫した方針だった。それは「減税の党」のイメージを売り込み、「今回は敗北したが絶対に諦めない」と宣言し、ガソリン減税の前倒しなどのバラマキで戦う戦術だ。
インフレ率が4%を超え、長期金利が1.5%を超えたが、有権者はマクロ経済も財政も知らないから、減税を叫び続ければ参院選でも勝てるという計算だろう。特に地方の1人区に多くの候補を立てるので、老人を敵に回す社会保障改革は下ろした有能な卑怯者である。
しかしバラマキなら自民党のほうが上だ。若い有権者が国民民主を支持したのは社会保障改革に期待したのだが、そういうコア支持層は離れるだろう。野党第一党の立民党は最初から団塊老人の党で、紙の保険証で失笑を買った以外まったく存在感がなかった。
維新は前原共同代表を解任してコミュニケーション回復を今はこんな政局ゲームをしているときではない。社会保障改革は待ったなしである。特に今年から団塊の世代が後期高齢者で1割負担になり、あと5年もすれば介護が大きく増えるだろう。医師会の代理人である厚労省にまかせていては、医療も財政も破綻する。