私なら「中国経済の成長率の鈍化は、長期的には軍事費の膨張を抑制するだろう。いつまでも富国強兵路線をとるわけにいかなくなる。そういう視点からすれば、日本のメディアが習近平政権と同じような目線で心配をする必要はない」と考えます。「中国経済の停滞」には歓迎していい点も少なくないのです。

朝日の社説はどうだったのでしょうか。「この大国の経済と社会には将来の不透明感が立ち込める。長期的な経済成長の鈍化と長引く不動産不況という問題がある」、「不安を抱えて倹約に努める市民に対しては、社会保障制度の充実こそが王道だ。年金、医療制度の補強が必要だ」と指摘しています。

読売はもっと明解です。「トランプ政権からの圧力をかわしつつ、経済と軍事の両面で足場固めを急いでいる」と、強調しています。経済停滞、成長率の低下で「経済と軍事の両面」に国力を傾注することはだんだん無理になってきている。軍事優先からの転換が必要になっていると私は思います。

さらに読売は「消費者の節約志向は高まっている。治安も悪化し、各地で無差別殺傷事件が起きている。目先の景気刺激策だけでなく、社会保障制度の充実が不可欠だ」、「軍事予算案は過去最高の36兆7000億円が計上され、経済成長率目標を上回る7・2%の伸びになった」、「中国軍内では汚職が蔓延し、高官の摘発が相次いでいる。軍拡路線の内部で一体何が起きているのか」と手厳しい。

日本も米国の要求で防衛費をGDP比で2~3%まで上げる方向です。EUもロシア対策、米国の欧州離反で125兆円規模の資金を投入する計画を決めました。日欧は自国を守るための国防費でしょう。一方、中国を侵略しようとする国はまずなく、中国圏の拡大、覇権確立のための国防費です。毎年の予算を巨額の軍備拡張費に割いていけば、長期的には軍事予算な経済成長率に寄与するどころか、低下を招きます。

日経は一般記事では「米国に対抗、軍拡堅持」「削減要求反発、台湾有事にらむ」と書いています。そこまでは強調しているのに、社説では全く触れていません。「台湾有事にらむ」といっても、有事を引き起すのは中国側です。「予算を軍事でなく、民生安定に振り向けるべきだ」と書くべきです。