「意識不明」と聞くと、まるで深い眠りに落ちたかのように、外界の刺激に一切反応しない状態を想像するかもしれません。
しかし、最新の研究によると、一見すると意識がないように見えても、実は脳が外部の刺激に反応している可能性があることが明らかになりました。
これは「認知運動解離(Cognitive Motor Dissociation, CMD)」と呼ばれる現象であり、脳の中では意識が残っているにもかかわらず、体が動かず意思疎通ができない状態です。
この「隠れた意識」の存在を明らかにする鍵となるのが、**スリープスピンドル(Sleep Spindles)**と呼ばれる脳波のパターンです。
最新の研究では、このスリープスピンドルが患者の意識回復の可能性を予測する指標になることが示されました。
今回の研究は、米国のコロンビア大学アービングメディカルセンターを中心とした国際チームによって行われ、2025年3月にNature Medicine誌に掲載されました。
目次
- 脳の「隠れた意識」を探る
- 意識不明でも脳は外部刺激に反応している!?
脳の「隠れた意識」を探る
過去数十年にわたり、脳損傷を受けた患者の中には、明らかな意識の兆候が見られないにも関わらず、EEG(脳波測定)やfMRI(機能的MRI)で脳の活動が確認されるケースが報告されていました。
これは「CMD(認知運動解離)」と呼ばれています。
最近の調査でも、意識不明と診断された患者の4人に1人はCMDであると報告されています。
「意識不明の勘違い」調査したら4人に1人は体が動かないだけで意識はあった!
こうした症状を聞くと、外部からの呼びかけを認識していて思考もできるのに、体で表現する運動能力は沈黙している「閉じ込め症候群(locked-in syndrome)」という症状をイメージしてしまいますが、CMDはここまで鮮明な意識がある状態ではないので混同しないよう注意しましょう。