昨年(2024年)7月25日に全面開業した渋谷・桜丘の大型商業施設「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」がガラガラ状態になっているのではないかと話題を呼んでいる。果たして実態はどうなのか。また、開発元の東急不動産は渋谷駅を中心とした半径2.5km圏内を「広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)」と定めて「100年に1度」と呼ばれる大規模再開発を進めているが、現状、プロジェクト全体はどう評価できるのか。専門家は「予想以上にうまくいっている」と評価するが、その実態を追ってみたい。
渋谷の再開発が大きく動き出したのは、渋谷駅周辺139haのエリアが「都市再生緊急整備地域」に指定された2005年のこと。渋谷を地盤とする東急不動産は、「渋谷ヒカリエ」(2012年)の開業を皮切りに、「渋谷ストリーム」(2018年)、「渋谷スクランブルスクエア」(19年)、「渋谷ソラスタ」「渋谷フクラス」(同)といった大規模複合施設を次々と開業。27年度には東急百貨店本店の跡地にリテール、ホテル、レジデンス(住宅)などからなる施設が竣工予定となっている。
その再開発の一環として昨年に開業した渋谷サクラステージは、A街区「SHIBUYAサイド」、B街区「SAKURAサイド」からなり、「SHIBUYAタワー」「セントラルビル」「SAKURAタワー」「SAKURAテラス」の4棟のビルを擁する。オフィス、商業施設、住宅、サービスアパートメント、子育て支援施設、国際医療施設、起業支援施設などが設置されている。「渋谷駅隣接という稀有な立地においてオフィスや商業施設に加え、渋谷駅中心地区では、唯一住宅が共存することによって、『働・遊・住』のすべてをシームレスにつなぎ、多様な世代が住み、訪れる、活力のあるまち」をコンセプトに据えている。
施設内での回遊性に課題
そんな渋谷サクラステージが閑散としているという情報が一部SNS上で広がっているのだが、実態はどうなのか。不動産事業のコンサルティングを手掛けるオラガ総研代表取締役の牧野知弘氏はいう。
「上層階のオフィスフロアのテナント入居は順調で、IT系のテナントさんで埋まっているので、ビルとしては『順調』と評価してよいと思います。低層階の商業フロアの店舗については、実際に現場を見に行きましたが、テナントが入居していないスペースが目立ち、特に夜などは非常に寂しい状況でした。ですが不動産開発においてはオフィスフロアが埋まっていれば、収益的には順調となります」
低層階の商業フロアが空いている理由は何か。
「2つほど要因があると思います。一つは施設内での回遊性がないということです。百貨店に限らずどの商業施設でも、お客が建物の中に入って全体をくまなく一周してくれるような造りにするというのが、基本中の基本です。渋谷サクラステージは敷地が縦に細長い形状であり、渋谷駅のほうから見て奥に行けば行くほどビルがすぼまっていき、反対側に抜けると、そこは住宅街になってしまいます。商業店舗としての回遊性がないがゆえに、魅力が減じてしまうという難点はあると思います。これには建物の構造、敷地の形状上、やむを得ない面でもあります。ここに高級ブランドショップのような、買い物を目的とするお客を誘客するのは厳しいでしょう。
もう一つの要素は渋谷サクラステージの立地です。かつて渋谷という街はオフィスというよりは商業街というイメージが強かったのですが、近年の開発が進んだ結果、今ではIT系のテナントが集まるオフィス街に変貌しました。東急東横線が地下化した結果、買い物客がみんな渋谷から新宿三丁目に流れているともいわれており、渋谷より新宿のほうが商業街になりつつあります。その結果、渋谷の駅前にいるのはIT系企業などに勤務する会社員で占められるようになり、そうすると商業施設としては牛丼チェーンであるとかコンビニエンスストア、通常のランチが食べられたり、独身の方が帰宅途中で夕食を食べることができる、ちらっと寄るようなファストフード的な飲食店しか可能性が見いだせないということになります。
もともと渋谷では商業街として有名だったのは西武百貨店や東急百貨店があったエリアであり、桜丘は住宅地でした。そうした立地も大きなポイントだと思います」