これはつまり、「音=恐怖」の記憶が弱まっている可能性を示します。

さらに翌日になってもう一度テストしても、同様にフリーズ行動が減少していたことから、「ただ疲れて動けない」のではなく、実際に恐怖が薄れていると考えられます。

また、研究チームはマウスの脳を調べ、恐怖や不安の制御に深く関わる「扁桃体」などの領域で神経細胞の成長や働きを助ける**BDNF(脳由来神経栄養因子)**の量が増えていることも突き止めました。

こうした分子レベルの変化が、恐怖反応を抑える鍵かもしれないとみられています。

 “あえて寝不足”が恐怖を抑える理由と今後の課題

睡眠障害は恐怖記憶を忘れやすくする効果もあった
睡眠障害は恐怖記憶を忘れやすくする効果もあった / 図の内容: マウスの脳内(扁桃体や前頭前野など)で観察されたBDNF(脳由来神経栄養因子)の発現量を表すグラフ。睡眠を奪われたマウスとコントロール(普通に眠れた)マウスの比較が示される。このグラフは、睡眠を奪ったマウス(睡眠剥奪群)と、普通に眠れたマウス(コントロール群)とで脳内のBDNF(脳由来神経栄養因子)がどの程度増えているかを比較しています。 BDNFは神経細胞の育成やシナプス強化を助ける物質で、恐怖や不安の制御に重要な扁桃体(BLA)や前頭前野などで量が上昇すると、神経回路の再編が起こりやすくなります。 もしグラフの縦軸が「BDNF量(相対値)」、横軸が「脳の領域」や「グループ(コントロール/睡眠剥奪)」を示す場合、睡眠を奪われたマウスほどBDNFが高い値を示すことがわかります。これは単に記憶の固定を阻害するだけでなく、「恐怖を抑える方向に脳の神経回路が変化した」可能性を示唆する大きな手がかりといえます。/Credit:Allison R. Foilb et al .Neuropsychopharmacology (2024)

今回の実験では、「学習直後」に限らず「翌日にあえて睡眠を奪う」という方法でも恐怖反応が顕著に減衰する点が特筆されます。