開発のベクトル

現在のスバルの開発状況では、制御統合型ECUをオリジナルで開発しているという。いわゆるセントラル・コンピュータで、UXやAD/ADAS、ダイナミック性能を動かすECUだ。もちろん、ビークルOSもオリジナルということになり、大方の予想ではトヨタが開発しているアリーンOSを予測していたと思うが、その期待を良い方向で裏切ったと思う。

その制御統合型ECUでは、新UXの実現が必要であり、そのためにはソフトウェアの開発は必須となる。そのためのWe Workということでもあるわけだ。さまざまなIT企業のエンジニアが集まるWe Workには、マッチング機能もあるということで、企業同士が繋がりがしやすい環境というわけだ。

SUBARU デジタルカー開発の拠点を渋谷にサテライト開設 世界最先端を狙う次世代モビリティSDVの考え方
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)
SUBARU デジタルカー開発の拠点を渋谷にサテライト開設 世界最先端を狙う次世代モビリティSDVの考え方
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)
SUBARU デジタルカー開発の拠点を渋谷にサテライト開設 世界最先端を狙う次世代モビリティSDVの考え方
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)
SUBARU デジタルカー開発の拠点を渋谷にサテライト開設 世界最先端を狙う次世代モビリティSDVの考え方
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

そしてすでに協業が公表されている企業に、半導体メーカーのAMD、ONSEMI、パナソニックエナジー、そしてアイシンなどがあり、アイシンからは3in1などのe-Axelが提供され、パナソニックエナジーからは車載バッテリーが供給される。

そしてAMDとONSEMIにおいてはAI半導体の開発をしていくことになる。現在AMDのVersal AI Edge Gen2をベースに開発が進められているという。これは完全なSUBARU専用のものではなく、AMDが提供するAIを、スバルには不要なものがあり、それらは削除し、また必要とする機能は独自回路を追加した半導体AIだ。

必要とする機能のキーは、やはりステレオカメラをベースとするアイサイト技術だ。走行環境を見極めるアイサイトの性能を上げるためにAMDのAIが必要であり、捉えたデータをONSEMIのイメージプロセッサーで解析し、統合制御ECUに指令をだす。それをオリジナルのビークルOSで稼働させるという仕組みになる。さらにEV自体も同じECUで制御しており、AD/ADASの性能向上に繋げている状況だ。

E/Eアーキテクチャーの新プラットフォーム

新UXとしているユーザーエクスペリエンスは、いわゆるIVIでIn Vehicle infotainmentであり、知能化されたAIはさまざま価値を体験させるものになっていく。つまりオーナーの行動を学習し、提案をしたり注意喚起をしたりといったものや、クルマに近づくだけでドアが開いたり、トランクが開いたりといった予測行動も体験できることになる。

こうしたループを作るためのE/Eアーキテクチャー≒電気・電子プラットフォームも新たに開発が進められており、このE/EアーキテクチャーをベースにビークルOSを搭載し、スーパーコンピュータによってさまざまなソフトウェアがハード部品を動かすというのが現在進めているデジタルカー開発だ。

そして求める「スバルらしさ」はAWDや水平対向エンジンだが、次世代においても「らしさ」を追求し、スバルの本質を輝かせるモビリティとし、最終的には持続可能な社会の実現という自動車会社としての目標を掲げているのだ。

そのプロセスの途中にはエンジンを使ったHEVやPHEVなどからのCO2削減、脱炭素ということもロードマップに含まれ、E/Eアーキテクチャーによって、徹底的にSUBARUの魅力を引き上げていくという狙いを持っている。

そのため、ソフトウェアによってハードの性能を引き上げることが重要というフェーズにいるとも言える。さらに、このWe Workで働くメンバーには、IoTでつながることで提供できる価値を、ビジネスモデルに変えていくことが求められており、その部署も稼働が始まっているという状況だ。

このように、柴田執行役員を中心に、SUBARUの価値づくりにつながるデジタルカー開発は進められており、20年代後半にはその実像が提供され始めるだろう。

提供・AUTO PROVE

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