労働党のスターマー首相はこれまで華やかさに欠けた辺境の人物のように見えた。しかし今、スターマー氏は欧米間の外交の危機を巧みに利用して尊敬を集めている。ヴァイマー記者は「最初は自信がなかった首相が、突然、自信に満ちた世界政治のプレーヤーのように見える。彼は、アメリカに失望している不安なヨーロッパ人たちに優しい顔を見せている」と描写している。

英国が蘇ってきたことから、欧州の諸問題は今後、スターマー氏、マクロン氏、ドイツの次期首相メルツ氏の3人の指導者が中心になって取り扱われていくだろう。3人はいずれも「強く、自信を持った欧州」を主張している。もちろん、問題がないわけではない。欧州の2大核保有国、英国とフランス両国の主導権争いが出てくるかもしれない。その時、EUの盟主ドイツの仲介が求められる。

ちなみに、「EUには4億4,800万人以上が住んでいるが、米国にはわずか3億4,000万人しかいない。EUは世界最大の工業製品とサービスの輸出国だ。世界貿易に占めるEUのシェアは13.7パーセントだが、米国は10.4パーセントに過ぎない。EUは17兆ユーロの国内総生産を生み出している。ロシアは2兆しかない。経済的には、EUはロシアの8倍強い」(ヴァイマー記者)。

スターマー首相は「ヨーロッパの分裂は私たち全員を弱体化させる。われわれは歴史の岐路に立っている」と欧州各国に行動を呼び掛けた。EUの2025年上半期議長国ポーランドのトゥスク首相はX(旧ツイッター)で、「欧州は目覚めた」と感動的に受け取っている。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年3月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。