ウクライナ停戦問題でロンドンで急遽開催された欧州主要国首脳会談(有志国会談)は、欧州連合(EU)を離脱して5年が経過した英国が再び欧州の代表国として登場する舞台となった。

英国のスターマー首相は1日、ワシントンでトランプ大統領らとの外交会合が決裂して意気消沈していたウクライナのゼレンスキー大統領を温かく迎え抱擁した。そのシーンは2020年1月のブレグジット以来低迷してきた英国の外交が蘇った瞬間でもあった。

ゼレンスキー大統領を歓迎する英国のスターマー首相 ゼレンスキー大統領インスタグラムより

スターマー首相はロンドンの会議の前にワシントンでトランプ大統領と会合し、ウクライナ停戦問題で話し合っている。ロシアとの停戦を急ぐトランプ氏に対して欧州の立場を説明するとともに、米国とロシア間の停戦交渉がうまくいくように連携姿勢を見せている。その数日後、スターマー首相は欧州の主要国にウクライナ停戦問題での欧州の役割を話し合うために首脳会談を招集したのだ。

ロンドンで2日開催された主要国首脳会談にはウクライナ停戦問題でイニシアチブを発揮しているフランスのマクロン大統領をはじめ、EUのウルズラ・フォンデアライエン委員長、北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長らが参加した。欧州独自のウクライナ停戦案をまとめたことは、「欧州に英国あり」といった印象を世界に発信させると共に、スターマー首相の大きな外交ポイントとなったことは間違いないだろう。「ホワイトハウスの交渉決裂劇」と「ロンドンの欧州主要国首脳会談」は外交的演出という観点からみればまさにコントラスだ。

独民間放送ニュース専門局ntvのコラムニスト、ヴォルフラム・ヴァイマー記者は4日のコラムの中で、「EU離脱から5年が経った今、英国人が旧大陸の主導的役割を再び担いはじめた。非EU加盟国がEUを団結させ、自信に満ちた新たな欧州精神の世界を切り開いたのだ。カウボーイ、専制君主、マフィアの手法を取り入れた新世界秩序の中で、イギリス人はヨーロッパ的、民主的であり、信頼でき、心地よい古風なやり方を誠実に見せた」と論評している。