たとえば電子機器の熱を逃がすために用いる冷却技術や、産業用の化学プロセス、宇宙空間での液体操作など、多方面で泡を活用・制御するニーズが高まっています。

具体的には、マイクロチップが発熱しすぎないように効率的に気泡を排出したり、洗浄や浮選(ふせん)技術で泡が運ぶ力を利用したりするなど、現代の産業や研究には欠かせない存在です。

しかし同時に、思わぬ場所で泡が詰まってしまいトラブルを起こすケースもあり、泡をいかに“いいところだけ利用し、不要なところでは排除するか”というのは長年の課題でした。

こうした「泡を自在にコントロールしたい」という要望から、さまざまな手法が開発されてきました。

超音波を使って泡を誘導したり、液体に電場をかけて泡を動かしたりする実験や技術もありますが、特定の装置や環境条件が必要となる場合が多く、使い勝手やコスト面での課題が残されています。

今回の研究チームは、もっとシンプルなアプローチ──つまり容器そのものを上下に振動させるという方法に着目し、「縦に振っているだけで泡が横へ移動するような現象は起きないのだろうか?」と試してみたのです。

すると常識をくつがえすような事実が明らかになります。

容器を縦に振れば泡はどう動く?実験が暴いた横走りのメカニズム

容器を縦に振れば泡はどう動く?実験が暴いた横走りのメカニズム
容器を縦に振れば泡はどう動く?実験が暴いた横走りのメカニズム / この図は、液体で満たされた容器の天井にくっついた泡が、縦方向に振動する中でどのように動き出すかを時系列で示しています。 上段の一連の画像は、泡が上下に振動するたびに形が変わる様子を捉えています。最初は、単に上下に伸縮しているだけですが、ある振動の強さ(しきい値)を超えると、泡の形が左右対称ではなくなります。 その非対称な形状変化が、泡に横方向の推進力を生み出し、結果として泡が天井に沿って「横走り」始める、いわゆる「ギャロッピング」運動となります。Credit:Jian H. Guan et al . Nature Communications (2025)