この記事が話題になっている。病院で処方されるOTC類似薬が安いのは、保険適用のせいだけではなく、薬価そのものが市販薬より大幅に安いためだという。これが事実だとすると、10割負担でも病院で処方してもらったほうがいいことになるが、本当だろうか。
病院が処方する薬の価格は、ほぼ同じ成分の市販薬の10分の1未満。AEmX9L
日本総研が調査。通院した方が安く、過剰受診を誘発するとして、専門家らが見直しを求めています。他方、日本医師会は見直しに反対姿勢です。 pic.twitter.com/Sq4vjHut9Q
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) March 3, 2025
結論としては「薬価が10分の1未満」というのは間違いで、次の表のように小売価格は、薬価の5~6倍である。
医薬品名 剤形 薬価 小売価格
ファモチジン(胃薬) 10mg錠 10円 52円
ロキソプロフェン(湿布) 50mg錠 12円 35円
フェキソフェナジン(花粉症) 60mg錠 10円 60円
この表の小売価格は、全国の零売薬局の最安値である(薬によって違う)。零売薬局というのは処方箋なしでOTC類似薬を売っている小売店である。上のような薬を小売店で売ることは合法なので、普通の薬と一緒に売っている店も多い。

零売薬局
たとえばフェキソフェナジン(商品名アレグラ)は零売薬局で買うと1錠60円だが、薬価は10円だから3割負担でも3円、1割負担だと1円である。普通の薬局でアレグラを買うと約100円だから、開業医で処方してもらうと1/30以下の価格で買える。これが開業医の重要な収入源である。
「OTC類似薬」というグレーゾーン日本総研の調査はこの薬価を小売価格と比較したものだが、零売薬局では小売価格のほぼ半分で買える。これは医療用医薬品を問屋から仕入れているからだ。