他方、ヴァンスは「ウクライナよりラストベルトに金を配れ」と主張し、ウクライナから手を引きたい。トランプはウクライナをプーチンに売り渡し、欧州から撤退したい。このまま戦争を続けて犠牲者を増やすより「プーチンの平和」のほうがましかもしれない。

三者の思惑が一致して、こういう結末に終わったのではないか。記者団に公開されなかったこの後の会談で収拾することもできたはずだが、トランプはゼレンスキーに昼食も取らせずに追い出した。それは最初から想定していた筋書きだったのではないか。

もともと今回の会談は、どっちも気乗りしない中で、アメリカのルビオ国務長官とロシアのラブロフ外相がリヤドで会談し、ベッセント財務長官がゼレンスキーを説得してワシントンに引っ張り出したものだ。

事務レベルの合意ができていないのに、ぶっつけ本番で大統領どうしが話し合い、そこに事情を知らない副大統領が乱入して話をぶち壊した…というのが公平な見方ではないか。どっちも悪いが、圧倒的に影響が大きいのはトランプの側である。今後の世界は「米露枢軸」と欧州の対決になるだろう。