すなわち、若い男性ばかりか、権威主義的な政治家も男らしさをアピールすることに余念がないわけだ。これは過度なジェンダーフリー運動の反動としての社会現象といえるかもしれない。「男らしさ」を求めて、筋肉増強や武道に関心をもつ男性が増えてきているのだ。

1970年代以降のフェミニズムやジェンダー平等運動により、性別に基づく役割意識は大きく変化した。しかし、近年「性差を完全になくすべき」とする過度なジェンダーフリーの流れに対し、「人間には本来の性別による特性がある」という声が強まってきたわけだ。

トランプ大統領は、従来の政治的正しさ(ポリティカル・コレクトネス)やリベラルな価値観に対して、伝統的な価値観の復権を主張してきた。大統領の支持者の多くは、「アメリカ的な男らしさ(rugged masculinity)」を重視し、「強いリーダー」「家族を守る男」といった価値観を支持する傾向がある。

参考までに、「男らしさ」を求める傾向は、保守的な右派の若者だけにみられるのではなく、イスラム教過激思想に走る若いイスラム教徒にもいえる。ドイツのミュンスター大学でイスラム教の教義を教えているモウハナド・コルチデ氏はオーストリアの日刊紙スタンダード日曜版で「イスラム教で過激主義に走る若者は‘間違った男性像‘を有している」と述べている。

.ところで、オーストリアの哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは「男らしさとは強さではない。自分の弱さを受け入れることだ」と述べている。この言葉を若い世代に理解させることは容易でないかもしれない。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年3月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。