トランプ氏がこれほどロシアの肩を持つとは思わなかったのですが、私から見るトランプ氏のウクライナ政策とは「終戦になれば何でもよい」という感じにも見えなくはありません。一方でウクライナの鉱物資源について当初、5000億ドルまでアメリカにその採掘販売権益をよこせといっていましたが、これではワシントンポストが報じるようにトランプ氏はマフィアと思われてしまいます。

アメリカが今日までにウクライナに投じた支援は約900億ドルとされます。それを回収し、更に儲けるためにコストの5倍の利益を要求するように見えるのです。金曜日の激しい口論はヴァンス副大統領の揶揄がきっかけともされますが、ゼレンスキー氏もそこに出向いたならそれなりの決意があったはずなのに相手のペースにはまってしまったのでしょう。それにしてもアメリカだけが利権を確保する、そんな話があってよいとは思われず、現在、英仏で調整している欧州案がどう出てくるのか、そしてウクライナを含む欧州連合とアメリカロシアという新たな構図がとなればややっこしくなりそうです。

金曜日までのシナリオはロシアは戦略的地域であるウクライナ東部とクリミア半島までを支配する、アメリカはウクライナの鉱物資源の利権を確保することで両大国がウクライナを分捕ることになります。(ただ、実際にアメリカが手にする鉱物資源権益がどれだけあるのか、私に聞こえてくるのはそんなにないのでは、という情報です。)鉱物資源のディールはアメリカとウクライナの二国間問題です。よって誰とどう合意形成しようが構いません。一方、ゼレンスキー氏は戦争期間を通じて世界各国に援助を求め、各国は相当の支援をしてきたはずです。それなのにアメリカだけとディールをするのは圧力に屈したか、裏取引があると思われても仕方がないかもしれません。

終わったばかりの国連総会で何故これがもっと掘り下げられなかったのかも不思議ですが、アメリカへの不信感は当然募ってくるでしょう。この片棒を担いだのがイーロンマスク氏であり、ドイツ総選挙で極右政党のAfDが第二党に躍進した陰の立役者であります。一方、マスク氏への批判は日増しに強まっており、それは欧州や北米におけるテスラ販売の激減に表れています。これはEVが売れなくなった一環ではなく、EVの売り上げ全般は伸びている中でテスラだけ蚊帳の外に置かれたのです。世界の軋みが民間企業の売り上げに響いている好例でしょう。