そこで採用されたのが、経口薬「リスジプラム」です。
長年の研究により、リスジプラムはSMAの治療に安全かつ効果的であることが示されており、薬の投与を開始する年齢が若いほど、全体的な結果も良好です。
そして研究チームは、母親にこの薬を服用してもらい、胎盤を通じて胎児に有効成分を届けようとしました。
この方法ならば、胎児への負担を最小限に抑えつつ、より早い段階で治療を開始できる可能性があるのです。
胎児の治療に成功!「生まれる前に防ぐ」へ
研究チームは、SMAが確定診断された胎児の母親に、出産前の6週間、毎日リスジプラムを服用してもらいました。
検査の結果、母親が服用した薬は、さい帯血(へその緒と胎盤に含まれる血液)と胎児を包む羊水を通して、胎児に効果を及ぼすことが分かりました。
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胎児の経過を慎重にモニタリングしながら治療を継続し、無事に健康な状態で出生することが確認されました。
そして出産後は、母親ではなく乳児にリスジプラムを投与し続けました。
生まれた赤ちゃんは健康な成長を続けており、生後30か月を迎えてもSMAの兆候は一切見られませんでした。
これまでSMA1型の患者は生後数か月で症状が現れることが一般的でしたが、今回のケースはそれを覆す画期的な成果となりました。
もちろん、今回の1例だけで治療を一般化することはできません。
安全性の確立など、克服すべき課題も残っています。
それでもこの成功は、SMA治療だけでなく、他の遺伝性疾患の治療法にも応用できる可能性を示しました。
いくつかの病気は、胎児期から治療を始めることで進行を防ぐことができるかもしれないのです。
「生まれた後に治療する」から「生まれる前に防ぐ」へ。
医学の進歩が、親と赤ちゃんにとって一層明るい未来を実現してくれます。
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参考文献