そのためこの技術が発展すれば、例えば先述の技術と組み合わせてAIが他人の夢の内容を読み取って、それをVR技術と組み合わせて再現することで他人の夢を体験できるようになる可能性もあります。
さらに未来の技術としては、AIが情報を直接脳へフィードバックすることで、希望した夢を寝ている間に見られるようになったり、他人の夢に干渉できるようになる可能性もあります。
この技術が実現すれば、他者の夢に忍び込むだけでなく、ストレスを和らげるために「癒しの夢」を見たり、試験前に「学習内容を整理する夢」を見るという世界も可能になるのです。
AIが夢を管理する未来
もしAIが私たちの夢をコントロールできるようになったら、どんな未来が待っているのでしょうか?
例えば、AIが悪夢を回避し、リラックスできる夢を優先的に生成することで、睡眠の質を飛躍的に向上させることができます。
この技術は、特にPTSD(心的外傷後ストレス障害)患者の治療にも応用が期待されています。
ターゲット・ドリーム・リハーサル(TDR:Targeted Dream Rehearsal)とAIを組み合わせた治療法の研究が進められており、悪夢のシナリオをポジティブなものへと変えることで、ストレスの軽減を図る試みが行われています。
さらに、夢の中でさまざまなシミュレーションを行うことで、現実世界のスキルを向上させたり、新たなアイデアを発想することができるかもしれません。スポーツ選手が試合のシミュレーションを行ったり、クリエイターが新しい発想を夢の中で試したりする未来が想像できます。
そのため、エンターテインメントとしての技術だけでなく、メンタルヘルスケアや、人間の学習能力の強化にも夢をコントロールする技術は応用されていくことが期待できるのです。
しかし、こうした技術の進化には倫理的な課題もつきまといます。
たとえば、「夢の中の体験を誰が管理するのか?」という問題や、AIが夢の内容を記録・分析できることによるプライバシーの懸念が指摘されています。