以下、オーストリア国営放送のヴェブサイトの記事を参考に、政府プログラムの概要を紹介する。
財政問題では、政府はEUの財政規則に基づき、財政健全化を進める方針だ。今後7年間で財政の健全化を図る。2025年の予算は63億ユーロ、翌年26年は87億ユーロ(約1.5兆円)となっている。
移民政策で、内務省を担当する国民党が主導となって厳格な政策を実施し、家族の呼び寄せを一時的に禁止し、14歳未満の未成年者(イスラム教徒の女性)のスカーフ着用禁止が明記されている。
ちなみに、オーストリア南部ケルンテン州のフィラッハで2月15日、23歳のシリア人がナイフで路上の通行人を襲撃し、1人の14歳の男性を殺害、5人に重軽傷を負わす事件が起きたばかりだ。カルナー内相は16日、フィラッハで記者会見を開き、「容疑者はイスラム過激テロ組織『イスラム国』(IS)シンパで、犯行は宗教的動機に基づくテロだ」と説明した。家宅捜査された容疑者の家にはISの旗があった。カルナー内相は新政権でも内相を務める予定だ。
社会政策では、貧困対策の一環として「子ども基礎保障」を導入し、2030年までに子どもの貧困を半減することを目指す。現在の社会保障制度は「新・社会保障制度」に改定され、統一の給付額を設けること、家賃値上げの凍結などが記されている。
オーストリア軍の強化計画は継続され、欧州の防空システム「スカイシールド」にも参加する。公共放送(ORF)の受信料は据え置き。自由党は受信料の廃止を強く要求してきた。また、学校給食の充実、幼稚園の2年義務制などが挙がっている。
教育分野では、ネオスが主導となって教育改革を実施、学校でのスマートフォン禁止と全日制学校の拡充保護者の責任を強化し、学校での問題児、生徒に対する対応の厳格化などが目標となっている。
同国の議会政党は5政党で、国民党、社民党、ネオスの3党が与党、自由党と緑の党の2党が野党となる。なお、自由党は総選挙では第1党に躍進し、キックル党首は国民党との連立交渉を行ったが、内相のポストを主張し、国民党との間で閣僚の分割問題で妥協を拒否したため、連立交渉が暗礁に乗り上げた経緯がある。