日本のネットビジネスの料金、欧米と比較してかなり低い金額

 以上をみてみると、直接的な楽天ユーザー以外の多くの人々も、さまざまな領域で楽天のサービスが存在するがゆえに低価格という恩恵を被っているという側面があるとも考えられる。昨年、楽天Gの存在が海外勢の値上げの防波堤になっているという記事がバズった経済評論家で百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏はいう。

「日本のネットビジネスの料金が欧米と比較してかなり低い金額に抑えられているのは事実です。その背景には、デフレ以上に競争が関係していることは間違いありません。欧米ではGAFAMを中心にネットサービスでは勝ち組が確定して、結果としてサブスク価格は年々値上げの方向にあります。一方で日本の場合は価格面での競争のリーダーは間違いなく楽天Gです。

 まずネットサービスの価格について、アマゾンプライムの年会費が日本では5900円ですが、アメリカでは139ドル(約2万2000円)と4倍近い価格差があります。なぜかというと、アマゾンは日本ではインターネット通販分野で楽天と激しい競争を続けているからです。楽天市場では送料無料の商品も多く、さらに3980円以上の場合は一律送料無料になるサンキューショップがたくさんあります。楽天ブックスも送料無料です。結果としてアマゾンプライムの送料無料特典は、アメリカ市場と比較してそれほど魅力的な内容にはなりませんでした。そのためアマゾンプライム導入時に日本ではアマゾンは年会費を低く抑えざるを得ないことになりました。

 正確にいえば、競争という意味ではヨドバシ・ドット・コムやヤフーショッピングの影響も大きいうえに、宅配便の送料が日本は安いことが背景要因としてありますので、楽天ひとりの手柄というといい過ぎだとは思いますが、それでも楽天に対する競争がアマゾンにとっては最重要ベンチマーク要因であることは間違いないでしょう。

 このアマゾンプライムの低価格化は、さらに他のネットサービスの価格を抑える連鎖を作り出しています。低価格のアマゾンプライムの会員数が日本では1800万人を超えたのですが、これは結果的にアマゾンプライムビデオを視聴できる会員数がその規模になったことを意味します。すると動画配信事業を行う競合は価格を上げることが難しくなります。Netflix(ネットフリックス)は月890円で広告付きプランを視聴できますし、Disney+(ディズニープラス)は月額990円です。いずれも欧米各国のプラン料金よりも安く視聴できます。

 音楽のサブスクのSpotify(スポティファイ)も同様で、アマゾンミュージックの価格が安く設定されていることから日本ではスタンダードなプランの月額は980円。これに対してアメリカでは11.99ドル(約1900円)とやはり割高です。

 これらの事実からも、まわりまわって楽天へのアマゾンの対抗価格が、ネット大手の海外勢に対する価格の防波堤になっていることは間違いないでしょう。

 一方で国内の携帯電話料金でも同じことが起きています。モバイル事業に参入したことで楽天グループは巨額の赤字に苦しむことになりましたが、その価格設定が低かった結果、国内大手3社はいずれも料金を大幅に下げた新プランを提供せざるを得なくなりました。

 楽天の参入以前はスマホユーザーの月額料金はだいたい7000円程度だといわれていました。それが現在では楽天モバイルと競争可能な新商品が前面に押し出されています。NTTドコモの場合で説明すると、データ利用が多いユーザーの場合、ahamoが月2970円と楽天と競争できる金額に下げたうえに、データ量も30GBと増量しています。データ利用量が少ないユーザーはirumoで3GBが月880円から。これらのプランは完全に楽天モバイルの価格設定の対抗価格に設定されていることがわかります。

 赤字幅が縮小してきたとはいえ、いまだ楽天Gの経営状況が苦しいことには変わりありません。だからといって、もし楽天が苦境で価格方針を変更する事態に陥れば、スマホ料金もサブスク料金も低価格の縛りがなくなって一気に値上げされるかもしれません。消費者は自衛のためにも、できる範囲内で楽天Gを利用するように心がけることが本当は必要なのだと私は考えます」

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

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