一方、西側諸国は最大限の支援をしたと思います。特にロシアへの制裁は厳しいものだったと思います。しかし、世界はアンチロシアの国ばかりではないのです。我々は西側先進国の一翼であるためにロシア制裁はロシアが苦しむはずだと思い込んだわけです。ところがインドが見事に裏切ったし、中国はロシアから好条件を引き出すことに成功します。更に当初はイランからの武器弾薬供給が主流だったものが北朝鮮を巻き込むことで一気に巻き返しを図り、今のプーチンは明らかに余裕すら見えるのです。

トランプ氏はゼレンスキー氏に「休戦、講和をするか、支援打ち切りのどちらかを選べ」と迫るはずです。アメリカは資金的に十分すぎるほどの支援を行ったが、もはやこれ以上の余力はない、これがトランプ氏の明白なスタンスです。バイデン氏は支援しなくてどうする、と言いますが、勝てない戦争につぎ込む余裕はないというのがアメリカ的なドライな発想です。

よって岸田氏が春にアメリカ公式訪問した際にバイデン氏から「キッシー、アメリカの代わりに〇兆円ほどウクライナ支援、よろしく」と言われる可能性は相当高く、岸田氏も無下に断れず一定の協力を惜しまないというのでしょう。高くつく訪米になりそうです。ですが、今の情勢で行くとバイデン/カラマ ハリスのコンビがトランプ氏に勝てる情勢にはない気がします。せめてハリスを変えてほしかったのですが、それこそ民主党が弾切れを起こしてしまったのです。

ではゼレンスキー氏の国内人気はどうなのでしょうか?各種世論調査を組み合わせると22年2月の支持率が91%、23年10月が81%、23年12月が61%となっています。また2月8日に国民人気が高かったザルジニー総司令官を解任しており、これが影を落としている公算は高いとみています。仮に今、世論調査をやれば半数を切る4割台に低落しているとみています。また5月にあるべき大統領選挙を先送りしていることへの国内の不満もたまるはずでゼレンスキー氏に後はないとみるのが現在の趨勢かと思います。

欧州諸国もゼレンスキー氏の失脚が予見されるなら支援交渉は停滞気味になるでしょう。個人的には大統領選挙は戦後まで引き伸ばすのではなく、早めにやるべきだと思います。そして世界をその政局に巻き込みながら切り口を変える必要が出てくるかと思います。

ウクライナのNATO加盟問題はそもそもGDPの2%なりを支払える状態にない中でなぜ、NATO諸国がそこまでしなくてはいけないのか、という一歩引いたスタンスになる公算があります。トランプ氏もNATO加盟国に金を払っていない国がある、と不満をぶちまけているのでウクライナの加盟はそう簡単ではないとみています。

最後に講和ですが、個人的にはやはり旧宗主国との争い以上のものではないと考えています。よって講和があったとしても比較的両国内の問題にとどまり、欧米諸国はロシアへの経済制裁は引き続きタイトなものとし、ウクライナは国家の再建を目指しますが、実態としてはインフラが相当痛み、住めなくなった地域も多く、再興は困難を余儀なくされるとみています。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年2月26日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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