両国は、今回の安保理決議の内容に不満があったと想定されるが、半世紀ぶりに欧州単独で拒否権を発動するような行為は慎んだ。三大国が意思を固めている状況で、あえて欧州諸国だけで拒否権を行使するようなことはできなかった、という描写もできる。
国連総会で採択された決議(A/ES-11/L.10)は、ロシアの「侵略」を非難する内容であった。ウクライナと欧州諸国が中心になって決議案を提出した。賛成93カ国、反対18カ国、棄権が65カ国であった。国連加盟国総数は193カ国なので、17カ国が投票そのものを回避したことになる。国連加盟国数の過半数に到達していないのに決議が採択されたのは、投票総数の過半数が賛成であれば採択されるためである。
言うまでもなく、賛成票を投じた諸国の中心は、欧州諸国であった。それに2022年・23年の同趣旨のロシアの「侵略」を非難する決議に賛成した日本や韓国などのアメリカの同盟諸国や友好国が残った。しかし2022年・23年の決議が141カ国の賛成票を集めたのと比べると、48カ国が賛成票の陣営から離脱したことになる。アメリカがその中の一国であり、棄権も選択せず、反対にまで回った。
棄権と無投票をあわせた83カ国が、賛成も反対もしなかった。ロシアの「侵略」を認める投票行動を避ける一方、安保理決議で示された戦争終結への努力を支持する立場から、そのような中立的行動をとったのだと思われる。
反対したのは、ベラルーシ、ブルキナファソ、ブルンジ、中央アフリカ共和国、北朝鮮、赤道ギニア、エリトリア、ハイチ、ハンガリー、イスラエル、マリ、マーシャル諸島、ニカラグア、ニジェール、パラオ、ロシア、スーダン、アメリカ合衆国であった。
従来から総会決議に反対してきたのは、ロシアに加えて、ベラルーシ、北朝鮮、ニカラグアである。シリアは、アサド政権崩壊を受けて、棄権に回った。
今回新たに反対陣営に加わったのは、まずはアフリカ諸国だ。ブルキナファソ、ブルンジ、中央アフリカ共和国、マリ、ニジェールは、いわゆる仏語圏諸国である。フランス軍を追い出してワグネルを入れている「サヘル諸国同盟」の三ヵ国がその典型だ。マリは、ウクライナの同国への介入に抗議する訴えを、安保理に提出したこともある。その他のアフリカの反対票を入れた諸国であるスーダン、赤道ギニア、エリトリアは、自国の外交的立ち位置の計算から、ロシア寄りの立場を強めている諸国だ。