工場閉鎖は電気自動車販売の不振のせい?
「ボクスホール、お前もか」。
昨年11月末、そんな声が聞こえてきそうなニュースが発表されました。欧州の自動車メーカー大手傘下ボクスホールの英中部ルートン工場の閉鎖を発表したのです。工場で働く1100人の雇用が危うくなりました。
シトロエン、プジョーなどの著名ブランドを持つステランティスは、電気自動車(EV)の販売に課せられた厳しい販売ノルマがルートン工場の閉鎖の重大な要因になったと述べています。
過去10年間にホンダ、フォード、ジャガー・ランドローバー(JLR)が次々と工場閉鎖を発表しており、ボクスホールのルートン工場も続いた形です。
ステランティスの発表の数日前にはフォードが「EVの販売が予測以上に鈍化している」ため、800人の雇用削減を決定しています。日産も政府がEVの販売ノルマを緩めないと、北東イングランドにある英国最大の自動車の生産拠点サンダーランド工場の雇用にリスクが生じると述べています。
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曲がり角を迎えた欧州でのEV生産フォードHPより
英国では「2050年までにネットゼロ」が目標
英国は、気候温暖化防止対策の一環としてEVをプッシュしています。
2050年までに全ての温室効果ガス排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)にする目標を法令で定めているのですが、2021年時点で温室効果ガス総排出量の26パーセントは運輸部門によって発生し、しかもその半分強が車によるものでした。2035年までにガソリンとディーゼル車の新車販売が禁止され、EVはネットゼロを達成するために重要な役割を果たしていくことになります。
EV生産に移行させるため、政府は自動車メーカーに対し、ゼロエミッション車(ZEV)の販売を義務化しています。
昨年は乗用車販売台数の22パーセント以上をZEVとし、2030年に80パーセント、2035年に100パーセントへと段階的に比率を引き上げることになっています。メーカーは規制を超えて販売されたZEV以外の乗用車1台につき最大1万5000ポンド(約291万円)の罰金を科せられます。