宇宙探査の進展とともに、火星がかつて地球に似た環境を持っていた可能性が次々と明らかになっています。
そんな中、驚くべき発見が報告されました。
中国・広州大学と米カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)の新たな研究で、約36億年前に遡る「火星のビーチ」の痕跡が発見されたのです。
火星は今日の地球とよく似た海岸線や砂浜を持っていたのかもしれません。
研究の詳細は2025年2月24日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されています。
目次
- 火星にはかつて「海」が広がっていた?
- 火星の「ビーチ」の痕跡を発見
火星にはかつて「海」が広がっていた?
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火星は現在、極寒で荒涼とした砂漠のような環境ですが、約40億年前には地球のように水が豊富な時代があったと考えられています。
その根拠の一つが、火星の地表に見られる河川のような地形や湖の跡です。
たとえば、NASAの火星探査車「パーサヴィアランス」は、火星のジェゼロ・クレーターで三角州の証拠を発見しており、これは火星に長期間にわたって湖が存在していたことを示唆しています。
しかし一方で、火星に「海」が存在したという確固たる証拠はこれまで見つかっていませんでした。
1970年代の探査画像では、火星の北半球に沿って海岸線のような地形が確認されたのですが、その地形の起伏が大きすぎるため、海岸線とは考えにくいとされていました。
また、もし火星に広大な海が存在していたとすれば、その大量の水はいつ、どこへ、どのように消えたのかという疑問もあります。
こうした背景のもと、研究者たちは火星の地下を探ることで、過去の海の痕跡を探すことにしました。
火星の「ビーチ」の痕跡を発見
今回の研究では、中国の火星探査車「祝融号(しゅくゆうごう)」が収集した地中レーダーのデータが用いられました。
祝融号は2021年5月15日に、火星北半球の中緯度地方に広がる「ユートピア平原」に着陸し、1年間にわたって探査を行いました。