さらに、「場の量子論」によると、エネルギーを加えられた場は大きく振動し、「興奮状態」となる。この興奮状態が集まって安定すると、原子や分子のように、まるで実体があるかのように振る舞う。
また、「何もない」と思われる空間、いわゆる真空は、物質がなくなった後でも完全に空っぽになるのではなく、エネルギーが散らばって、働きを止めた状態の場が残る。これが、現代の場の理論の結論であり、「物質がなくなった後は、興奮していない場が残る」という答えになる。
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Oleh_Slobodeniuk/iStock
アリストテレスの自然観では、真空は存在せず、すべては連続したものとして考えられていた。ニュートンの時代以降、原子が存在すると考えられるようになったが、20世紀に入り、原子を構成する素粒子が実は場の振動から生まれていると分かった。たとえば、電子は、電子の場が特定の振動(共鳴状態)を作ることで、決まった質量や性質を持つように見える。この現象は、地震のときに建物がそれぞれ固有の振動数で揺れるのに似ている。
つまり、現代物理学では、物理現象の本質は個々の粒子ではなく、全体に広がる「場」の振動にあると考えられている。シュレディンガーが先鞭をつけ、やヨルダン、パウリが引き継いだこの考え方は、波が粒子のように振る舞うと説明され、「場の量子論」によって記述される。これにより、私たちの宇宙や物質の仕組みについて、まったく新しい視点が得られるようになった。
何もないはずの空間にも、見えないけれど確かな力が働いていて、その変化が生命や私たちの日常を作り出していると思うと、世界がもっと生き生きとして感じられる。
科学は常に変わり続けるもので、新しい学説が登場しては古い理論が見直されたり、傍流だった研究が正しいと判明したりすることも多い。
『この世界を科学で眺めたら』には、「場の量子論」をはじめとした科学の話にとどまらず、私たちが生きるこの世界全体に対する新しい視点と、心からの感動が詰まっている。