しかし、その後のイノベーションは進まず、現在は、IT時代の波に乗れず、ネットフリックスなどに負け、若者は見向きもしなくなってしまった。
【理由3】公共放送ゆえの自律性欠如
理由の第三は、公共放送として、世の中の不祥事を批判する「第四の権力」にもかかわらず、自分たちへの厳しい姿勢を持ちえなかったということだ。
組織風土が「軽さ」「楽しさ」を重視するのはいいが、ベースに企業倫理や厳しい規範を位置づけていなければ、社会的責任を果たせたとは言えない。
日枝さんの権力者・政治家との仲の良い関係が話題になったが、本来ならメディア保有者としてよくないどころか、権力の監視機構としての社会的責任・役割としても問題があっただろう。
ビル経営、都市開発、お台場、イベントなどの事業を幅広く手掛けてはいる。「都市開発・観光事業」として、営業利益126億円のサンケイビルをはじめ、利益で言うと「都市開発・観光」が全体を占める割合は45%にも上っている。
メディアがこうした事業を行うことはいろいろな見方はあるだろう。しかし、筆者からみると「自社PRがはなはだしいなあ」と思うところがフジテレビの番組を見ていて多かった。具体的にいうと、お台場のイベントなどの自社関連事業をより優先的にPRしているように思えた。公益の視点からは、利益相反的な放送も多かったように思える。
堀江さんのいうことをきちんと理解できなかった限界
日枝さんはクーデターで鹿内家を乗っ取り、その後、支配を確立していき、堀江さんらの買収劇を撃退した。しかし、ここからは、権力を握ることが目的化し、権力闘争に明け暮れてしまったのだろう。
競争環境がない 成功体験が強烈 組織は享楽傾向、風土の風通しが悪くなる
こうなると、どの企業も衰退していく。最大の強みである企画力やコンテンツ制作力も健全な組織風土がないと発揮できなくなる。ネットフリックス、アマゾンプライムなどの外資プラットフォームに圧倒されているテレビ業界の今の現状を見ても、巻き返しは難しいだろう。