得票率を連邦議会の議席数でみると、CDU/CSUが208議席、AfD152議席、社民党120議席、緑の党85議席、そして左翼党64議席、その他1議席となる。議会の過半数は316議席だ。メルツ党首はAfDとの連立を拒否しているから、過半数を有する安定政権を樹立するためには、連立パートナーが必要となる。 現地のメディアによると、CDU/CSUと社民党の連立政権(328議席)が最も現実的なシナリオを見なされている。問題は、2党連立に緑の党を加えるかで、CDU/CSU内で意見が分かれている。なお、ショルツ首相は今回の総選挙の結果を受け、CDU/CSUと社民党の連立政権ができたとしても、新政権には加わらないことを明らかにしている。

ドイツが直面している課題は移民政策、リセッションにある国民経済の回復だ。ウクライナ戦争の影響もあってロシアからの天然ガスはストップし、エネルギー・コストは急騰、物価は高騰する一方、輸出大国を誇ってきたメイド・イン・ジャーマニーのドイツ製品がコストアップで競争力を失うなど厳しい状況が続いている。ドイツ産業を支えてきた自動車産業は最大の顧客だった中国の需要が減少する一方、電気自動車分野で他の競争メーカーに後れを取り、工場閉鎖やリストラなどの対応に追われている。

ちなみに、選挙前からその動向が注目されたAfDは連邦議会で第2政党に躍進したことから、その政治的発言力は強まるが、メルツ党首はAfDとの連携を拒否していることもあって、AfDの政権入りは非現実的だ。同党はSNSを利用して支持者する一方、バンス米副大統領、イーロン・マスク氏らトランプ政権からの支援を受け、影響力を広めてきているだけに、同党の今後の動きが注視される。

なお、ドイツのウクライナ支援はメルツ政権となっても変化はないと受け取られている。ただし、空中発射巡航ミサイル「タウルス」のウクライナ供与については、メルツ党首はショルツ政権とは違い供与支持に傾いている。英国やフランスらが主導する欧州軍のウクライナ派遣問題ではドイツ国内でまだ議論が煮詰まっていないのが現状だ。