そのため、電気自動車の推進が世界的に進むと、これまではノウハウのあるメーカーに牛耳られていた自動車産業に、新興企業が参入しやすい構造になっていきます。

そうなると「現在のトヨタの安定性」だけを見て投資した場合、5年後、10年後にリスクを抱える可能性が出てくるのです。(※あくまで例えであって事実ではありません)

投資家としての脳を鍛える

こうした投資の意思決定にも神経経済学(Neuroeconomics) の視点が大きく関わっています。

投資を成功させるには、単に市場のトレンドを読むだけでなく、脳がどのようにリスクと報酬を評価するか を理解することが重要です。

例えば、投資家の脳では 前頭前野(Prefrontal Cortex)大脳辺縁系(Limbic System) のせめぎ合いが常に起こっています。

前頭前野は 論理的な分析長期的な計画 を担う部分であり、冷静な投資判断を助けます。一方で、大脳辺縁系は 短期的な利益感情に基づく意思決定 を司り、株価の急変動やニュースに対して即座に反応しやすくなります。

さきほどのトヨタ自動車の例え話で考えると、将来性を評価する場合、多くの投資家は「過去の業績が良いから大丈夫だろう」と考えがちですが、これは 「現状バイアス(Status quo bias)」 と呼ばれる心理的な偏りによるものです。

脳は 「変化を嫌い、現在の状態を維持しようとする」 傾向があるため、EV時代の到来という明らかな変化を過小評価し、リスクを見逃してしまう可能性があるのです。

また、リスクをどう評価するかも脳が持つ活動傾向が大きく影響します。

人の脳には損失回避バイアス(Loss Aversion Bias) というものがあり、脳は「利益を得る喜び」よりも「損失で受ける痛み」 を強く感じます。そのため、株価が一時的に下がるとパニックに陥り、本来の計画を無視して売却してしまうという行動が増えるのです。