16歳で数学を「捨てる」判断をした英国の学生たちは、推論・問題解決・記憶など多くの重要な認知機能がかかわる脳領域(中前頭回)でGABAの濃度が有意に低下していることが判明したからです。
また研究者たちは、中前頭回におけるGABAの濃度だけを判断基準にして、学生が16歳で数学を捨てたかどうかを判断できることを示しました。
さらに脳内(中前頭回)のGABA濃度を測定することにより、19か月後の数学の成績を予測することにも成功しました。
加えてGABAの脳内濃度は、数学を「捨てる」以前は変化がなかったことも判明。
これらの事実は、数学という特定の学習内容の有る無しが、個人の脳内物質の濃度に決定的な違いを産んでいたことを示します。
数学以外ではGABA濃度に変化がなかった
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今回の研究により、数学の学習が脳に生物学的・神経学的な変化を与えることが示されました。
興味深い点は、物理や化学、生物といった他の理系科目の有る無しではGABA濃度の変化が起こらなかったことがあげられます。
物理や化学、生物においても論理的な思考が求められますが、数学の代替にはなりえませんでした。
研究者たちは今後、数学以外に中前頭回におけるGABA濃度の増加をもたらす学習内容を探り、数学が本当に脳にとって特別な刺激なのかを確かめていくとのこと。
数学に匹敵するGABA濃度の上昇をもたらしてくれる学習内容が存在すれば、有益な脳の強化手段となるでしょう。
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参考文献
Lack of math education negatively affects adolescent brain and cognitive development
https://medicalxpress.com/news/2021-06-lack-math-negatively-affects-adolescent.html