子どもの有名私立小学校への進学は、教育に熱心な富裕層の関心事のひとつ。そんな私立小学校受験を考える時、このコロナ時代で基準となりうるのは「教育理念」と「ICT教育」ではないでしょうか。教育理念はその学校を体現する考えで、カリキュラムをも特色づけるために、志望理由の核となる部分です。また、近年関心の高まる「ICT教育」は、コロナ禍の終息が見えないなか、私立小学校ならではの魅力となっています。本稿では、この2つの観点から有名私立小学校を調べてみました。

私立小学校と公立小学校の主な違い

小学校では私立・公立を問わず、文部科学省が定める小学校学習指導要領をもとにカリキュラムが組まれますが、私立小学校ではその学習指導要領に加えて教育理念が重視されています。各私立小学校は明確な教育理念を掲げており、その実現へ向けた授業や設備投資がされているため、学校ごとに揺らぐことのない特色があります。

対して公立小学校は学習指導要領をもとに、各校長が中心となってカリキュラムなどの教育方針を決めるので、校長が代わればその方針も変わることもあるでしょう。

私立、公立で差が出やすい?「ICT教育」とは

ICT教育とは、情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)を活用した教育のことです。具体的には、パソコンやタブレットなどの情報端末、およびネットワークをはじめとする情報インフラなどを教育の現場で活用するものです。

私立小学校ではICT教育に力を入れているところが多く、タブレットやパソコンを1人1台使用、高学年からはタブレットを個人で所有し、それらをさまざまな授業で活用している学校も少なくありません。

対して公立小学校では文部科学省がICT教育を推進してはいるものの、コンピュータ1台当たりの児童生徒数は5.4人、普通教室の無線LAN整備率は41.0%です。設備費などの差もあり、公立の小学校が現在の私立小学校のようにICTを活用していくにはまだまだ時間がかかると見られます。

主な有名私立小学校の教育理念、ICT教育の方針

ICT教育に力を入れる、有名私立小学校3校を教育理念とともに紹介します。

洗足学園小学校(神奈川)

「謙虚・奉仕・犠牲・愛」という教育理念を持つ洗足学園小学校では、豊かな感性が他者への優しさの泉源となるとして、学校行事を通じリーダーシップや自主性、協調性などを身につけられるようになっています。

ICT教育に関しても1年生の段階から共用iPadを使用し、2年生になると個人所有で毎日使うようになります。子どもたちだけではなく、ICTの得意不得意を問わず全教員がiPadを活用でき、すべての授業でiPadがツールとして利用されています。そのスタイルも認められ、現在ではApple社の招待制プログラムApple Distinguished Schoolに認定されています。

聖心女子学院初等科(東京)

聖心女子学院では「一人ひとりが神の愛を受けたかけがえのない存在であることを知り、世界の一員としての連帯感と使命感を持って、より良い社会を築くことに貢献する賢明な女性の育成をめざします」という教育理念があります。

ICT教育では全教室にプロジェクタが設置されているだけではなく、5年生からはタブレットを1人1台配布されます。それによりデジタル教材の配信や意見交換、デジタルコンテンツの作成、プログラミング教育などが行われています。

立命館小学校(京都)

京都にある立命館小学校は「自由と清新」を建学の精神とし、「確かな学力を育てる教育」・「真の国際人を育てる教育」・「豊かな感性を育む教育」・「高い倫理観と自立心を養う教育」という「4つの柱」を軸とした教育方針を打ち出しています。

また立命館小学校では開校時からICT教育が行われてきました。各教室にはプロジェクタ・電子教卓が設置されており、3年生からは1人1台のタブレットPCを所有しています。アプリやソフトを活用し、一人ひとりの意見を見逃さずに授業を進めることができたり、これからの時代に必要なプログラミング学習などに役立てています。また、1年生からは“ロボティクス科”と呼ぶ授業を行うなど、次世代のスキル獲得に力を入れています。

こうした取り組みが認められ、教育ICT先進校としてマイクロソフト社が認定する「Microsoft Showcase School」にも選ばれています。