すると突然、ミシシッピアカミミガメが水中から姿を現し、ゆっくりヒナに近づいたかと思うと、すばやくヒナの1羽に噛みついて、水中に引きずり込んだのです。
驚いた母ガモはカメの甲羅を踏みつけて抵抗しましたが、カメもヒナも再び姿を現すことはありませんでした。
実際の映像がこちらです。(※ 音量に注意して、ご視聴ください)
報告を受けたアメリカ地質調査所(USGS)のブラッド・グロリオーゾ氏が先行研究も含めて詳しく調査し、ミシシッピアカミミガメが生きたヒナを襲うという明確な映像証拠が記録されたのはこれが初めてであることを確認しました。
またこの報告は「カメが穏やかな生き物」という一般的な見方を覆すものです。
なぜカメはヒナを狩ったのか?
研究チームは、今回の捕食行動が環境要因によるものではないかと考えています。
撮影されたカメは雌であることがわかっており、この時期はちょうど産卵期にあたっていました。
卵を産むために大量のエネルギーを必要とするため、通常の餌が不足していた場合、より高カロリーな獲物を狙った可能性があるのです。
まだ動きの鈍いヒナはその格好の餌食になったと見られます。
また、ミシシッピアカミミガメは外来種として世界中に分布を広げており、特に都市部の人工的な池や湖では、生態系の変化によって本来の餌資源が不足することがあります。
そのため、彼らは生き残るために柔軟な食性を発揮し、普段は捕食しない動物まで狙うことがあるのかもしれません。

この研究は、淡水ガメの食性に関する理解を大きく広げるものであり、特に外来種としての影響を評価する上で重要な知見を提供します。
ミシシッピアカミミガメは世界中の多くの地域で侵略的外来種として問題視されており、在来種への影響が懸念されています。
もし彼らが積極的に鳥類のヒナを捕食することが一般的になれば、野鳥の個体数に深刻な影響を与える可能性もあります。