その後、徐々に視覚的に目立つ特徴を減らしていき、最終的には、普通のダイビング装備を着用して餌も隠し、魚が50メートルを追跡した場合のみ餌を与えるようにしました。

すると、特に2種類のタイが毎日積極的にトレーニングに参加するようになりました。

研究者たちは、識別しやすい20匹ほどの個体に名前をつけるほどでした。(背中に銀色のウロコが2枚光るバーニーや尾びれが少し欠けているアルフィーなど)

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タイの「バーニー」/ Credit: MPI – Wild fish study humans(2025)

次の段階では、同チームのメラン・トマセク(Maëlan Tomasek)氏も参加し、ソラー氏と異なるダイビング装備を着用して、別々の方向へ泳ぐ実験を行いました。

この場合、トマセク氏は魚たちに餌を与えません。

すると驚くことに、魚たちは餌をくれるソラー氏を正しく見分けて、後をついていくことがわかったのです。

そこでチームは、ダイビング装備の違いが魚の判断に影響しているかどうかを確認するため、ソラー氏とトマセク氏をまったく同じ装備にしてみました。

その結果、魚たちは2人を識別できなくなり、どちらにもバラバラについていくようになったのです。

これらの結果から、魚たちはダイバーの装備の色や形を手がかりに識別している可能性が高いことが示されました。

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左:異なる装備、右:同じ装備/ Credit: MPI – Wild fish study humans(2025)

水中では人間も同じように仲間を見分けるため、外見的特徴を手がかりにしています。

ソラー氏は「ダイビングマスクによって顔の形が歪んで見えるため、私たちは通常、ウェットスーツやフィン、その他の装備の違いを頼りにお互いを識別しているのです」といいます。

研究者たちは、時間をかければ魚たちもより微細な特徴(例えば、顔つきや体型、髪型、手の形など)を識別の手がかりにすることを学習できるかもしれないと考えています。