シミュレーション仮説の証拠?

 ホッツの考えは、オックスフォード大学の哲学者ニック・ボストロムの研究から大きな影響を受けている。ボストロムは「シミュレーションの証明」という論文の中で、観測される宇宙の特性がシミュレーションであることを示唆するいくつかの根拠を挙げている。
① 三次元空間の必然性
 物理学の計算によると、安定した電子軌道や惑星の軌道は三次元空間でしか成立しない。もし四次元空間であれば、地球はすぐに太陽へと落下し、そもそも惑星が形成されることもなかった可能性がある。一方で、二次元空間では波の伝搬が不可能になり、人類のような情報のやり取りが成り立たない。
② 物理定数の絶妙なバランス
 物理学者ジョージ・ガモフの著書『不思議の国のトムキンス』では、物理定数がわずかに変わるだけで宇宙の構造が根本的に変わることが指摘されている。例えば、基本的な物理定数が微妙に異なるだけで、水素より重い元素が存在しなくなり、星の形成や生命の誕生が不可能になってしまう。
③ 素粒子の特性
 陽子や中性子、電子などの基本粒子の質量や電荷が、わずか10億分の1でも異なれば、原子そのものが存在できなくなる。このような精密なバランスが偶然に成立する確率は極めて低い。

現実は存在しない!? iPhoneを初めてハッキングした男が語る“シミュレーション仮説”
(画像=イメージ画像 Created with DALL·E,『TOCANA』より 引用)