「うちの親はまだまだ元気だから大丈夫。介護なんてまだ先の話……」そう思っている人は多いのではないだろうか。介護はある日突然始まり、いつ終わるかわからない。だからこそ他人事と思わず、今のうちからあらゆることをシミュレーションしておきたい。
介護離職しなければいけなくなる?
40代になると、多くの親は65歳以上の高齢者になっているだろう。今は大丈夫でも、これから徐々に介護が必要になる。
内閣府の調査では、65~74歳で要支援、要介護の認定を受けた人の割合は、要支援が1.4%で、要介護が3.0%であるのに対し、75歳以上では9.0%、23.5%に上昇する。
介護と仕事との両立が困難になれば、介護を優先して離職する「介護離職」も考えなければならない。介護をしている人は全体で627万6000人、そのうち仕事をしている有業者は346万3000人だ(総務省統計局「平成29年就業構造基本調査」より)。
介護と仕事の両立は想像以上に負担が重く、離職して介護に専念したいと考える働き盛りの世代も多い。ただし離職すれば、収入が減り貯金を取り崩して生活しなくてはならない。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査では、「離職時に就業を継続したかった」と答えた人は5割強で、精神面・肉体面・経済面で「非常に負担が増した」「負担が増した」と答えた人もいずれも5割以上に上っている(仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」)。離職しても、負担は必ずしも軽くできないのだ。
介護にかかるお金の実際
親の介護で心配なのがお金だろう。自分が仕事をできなくなる恐れがあることも考えると、雑誌やウェブなどの各種メディアで見かける「老後破産」が途端に現実味を帯びてくる。
お金の心配はたいてい、「いつ、何に、いくらかかるか分からない」から生じるものだ。だからまず、「どれくらい必要か」を見積もることから始めるといい。そのうえで具体的に対策を立てればいいのだ。
実際にはデイサービスなどを中心とした在宅介護と、有料老人ホームなどを利用した施設サービスでは費用が大きく異なる。
在宅介護は、デイサービスや訪問ヘルパーによる介護保険サービスの費用が平均で3万7,000円、おむつ代などの介護保険サービス外の費用が平均で3万2000円となっており、全体で月平均6万9000円だ(家計経済研究所の「在宅介護にかかる費用」より)。
要介護度が高くなるにつれて、介護保険で使えるサービスも増えるが、費用がさらに上がる可能性もある。
有料老人ホームは「介護付き」「住宅型」「健康型」の3種類があり、入居金は高いところで数千万円から数億円するところもあるが、入居金なしの施設もある。月額利用料は、約15~35万円だ。
特別養護老人ホームは入居一時金がなく、月額も6~15万円で有料老人ホームよりも安く入居できる。ただし、2015年に改正された介護保険法により、原則要介護3以上の高齢者しか入居できなくなった。
サービス付き高齢者住宅はバリアフリーに対応している住宅だが、入居一時金は無料のところも数百万円のところもある。月額利用料は13~25万円。ただし、介護サービスは外部の業者を利用することになる。
在宅サービスのみの利用なら費用負担は少なくても、肉体的、精神的な負担は増える。一方で、施設サービスはお金はかかるが、肉体的・精神的な負担は低くて済むかもしれない。
介護保険料が徴収される40歳を機に親の介護を考えよう
親が元気なうちに、親はどんな介護を望んでいるのか、そのお金を誰が出すのかなど、介護について意思疎通を図り、早めに介護の資金計画を立てるといいだろう。
具体的には、認知症や寝たきりになった時にどのような介護を選択するかをエンディングノートに書き記してもらうことや、後見人制度や家族信託制度を活用し、いざという時に家族が親の財産を管理し、介護費用も確保できるようするなどの対策しておきたい。
確かにこうした話をいきなり持ち出すのは難しいだろう。だが、うかうかしているうちに親が倒れないとも限らない。帰省をした際など、隣近所や知り合いの親が介護が必要になった例を引き合いに出して話を切り出してはどうだろうか。
また40歳になれば、介護保険料を納め始めることになる。「ついに俺も介護保険料を払うようになったよ」などと持ち掛けてみるのも手かもしれない。
文・森 泰隆(ファイナンシャル・プランナー)
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