お酒を楽しむ習慣は世界中で広く見られます。
しかし、お酒の飲み過ぎが体に悪いのは周知の事実ですし、もっと言えば、どんな量のアルコールでも健康に害悪となる可能性はゼロではありません。
特に「食道がん」との関連性は強く、世界保健機関(WHO)はアルコールに含まれるエタノール代謝産物アセトアルデヒドを「明らかな発がん物質」と分類しています。
そんな中、京都大学の研究チームは、飲酒が食道がんを引き起こす具体的なメカニズムを動物実験で解明したと発表しました。
これまで飲酒で食道がんが多発する理由は不明でしたが、今回の知見は⾷がん予防法の開発に役立つと期待されています。
研究の詳細は2025年2月6日付で医学雑誌『Journal of Gastroenterology』に掲載されました。
目次
- 飲酒で「食道がん」が多発しやすくなる
- 食道がんが多発する3つの要因を解明
飲酒で「食道がん」が多発しやすくなる
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お酒を飲むと、体内ではエタノールが分解され、アセトアルデヒドという化学物質に変わります。
アセトアルデヒドは強い毒性を持ち、DNAを傷つけることでがんを引き起こす原因になることが分かっています。
しかし、なぜ飲酒で「食道」だけにがんが多発するのでしょうか?
その大きな要因のひとつが、日本人を含むアジア人に多く見られる「ALDH2遺伝子の変異」です。
ALDH2はアセトアルデヒドを分解する酵素ですが、この遺伝子に変異があるとアセトアルデヒドが体内に蓄積しやすくなります。
これにより、お酒を飲んだときに顔が赤くなる「フラッシング反応」が起こるのですが、実はこの反応がある人ほど、食道がんのリスクが高いのです。
さらに、食道がんは一か所にできるだけでなく、広範囲に多発する傾向があります。
これを「フィールドがん化現象」と呼びます。
しかしなぜこのような現象が起こるのかは、これまで明確には分かっていませんでした。