しかし、そう簡単なことではありません。

出場者の企画を見ると、明らかに重要な要素が欠けているものが多いのです。落選するだろうと思っていたものが、フォロワーの人気で上位にランクインしているから困ったものです。提出する前に専門家に相談していれば、このような事態は避けられたはずです。

次に出版社のメリットを考えてみました。現在、一冊の本を出版するには約300万円のコストがかかると言われております。定価が1500円の場合、2000部を売り切らないと赤字になります。

出版とは投資であり、投資分の回収と利益が見込めることが重要です。著名人や実績のある人、ネットでの発信力が強い人は有利ですが、今回の出場者はあまり該当しません。

そこで、付加要素が必要になります。今回のようなコンテストは話題になりやすく、マーケティング効果が高いのです。さらに、出場者を競い合わせることで相乗効果が生まれ、本好きのデータベースを構築することができます。上手いビジネスモデルだと思います。

どんなにリスナーに人気があっても、良い企画でなければ出版は難しいでしょう。しかし、心をつなぎ、未来をつなぐ力を持つ企画が生まれれば、それは投資以上の価値を持ちます。

今回のオーディションから、読者に感動や気づきを与える一冊が誕生することを願ってやみません。また、きずな出版の今回の取り組みにも深く敬意を表します。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。

「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)