サメが人を襲う事故は決して頻繁に起こるものではありません(特に日本では)。
それでも海水浴やサーフィンを楽しむ人にとっては気になる話題です。
もし海でのサメとの遭遇を防ぐ画期的な方法があるとしたらどうでしょうか?
アイルランドのユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(UCD)の最新研究によると、コウイカの吐き出す墨にサメの嗅覚を混乱させる効果があることが示されました。
この知見は天然素材を用いた「サメ避け」の開発に役立つと期待されています。
研究の詳細は2025年1月8日付で科学雑誌『G3: Genes|Genomes|Genetics』に掲載されました。
目次
- サメの鋭すぎる嗅覚が弱点になる?
- コウイカの墨がサメの嗅覚を混乱させる
サメの鋭すぎる嗅覚が弱点になる?
サメは「泳ぐ鼻」と呼べるほど嗅覚が発達しています。
海中で血液の臭いを感知すると、わずかな濃度でもすぐに察知し、獲物の居場所を突き止めます。
これまで、サメの嗅覚はほぼ完璧なセンサーのように考えられていました。
しかし今回の研究は、その優れた嗅覚こそがサメの弱点になり得ることを示唆しています。
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その弱点を突く道具を持っているのは「コウイカ」です。
食材としても人気のコウイカは捕食者から逃げる際に黒い墨を吐き出します。
この墨は視覚的にサメの目をくらませるだけでなく、化学的にもサメの嗅覚をかく乱する可能性があるのです。
過去の研究では、コウイカの墨に含まれるメラニンやタウリンといった成分が他の魚の行動に影響を与えることが示唆されていました
一方で、それがサメの嗅覚にどう作用するのかは、これまで詳しく研究されていませんでした。
この疑問を解明するために、研究チームは調査を行いました。
コウイカの墨がサメの嗅覚を混乱させる
チームはサメの嗅覚受容体の働きを調べるために、ホオジロザメ(学名:Carcharodon carcharias)とトラザメ(学名:Scyliorhinus torazame) の嗅覚受容体をコンピュータ解析し、コウイカの墨の成分との相互作用を調査しました。