外資系ベンダーと日本企業ベンダーの違い

 NHKは開発を解除して代金の返還を求めたということだが、契約上、そのようなことは可能なのか。

「一般的なシステム開発の業務委託契約書では、相手方が契約書の定めに違反した場合は一方的に解除できると定められており、NHKとしては日本IBMが予め取り決めた開発方式や納期を守らないので解除したという論理でしょう。また、業務委託契約は成果物の納品とその検収をもって完了となりますが、システム開発が未完のまま納品物も納品されていないので代金は支払えませんよ、という主張でしょう。とはいえ、すでに日本IBM側では多くの工数が発生しており、今後の裁判のなかで『NHKと日本IBMの間で、開発が頓挫した責任の割合はどうだったのか』という点が争われて、裁判所がその責任割合を判断して賠償額を決めるということになるでしょう」(大手SIerのSE)

 日本IBMといえばNHKや前述の文化シヤッターとの契約以外でも、発注元との係争に発展する事例がしばしば生じている。野村ホールディングス(HD)と証券子会社・野村證券は2010年、社内業務にパッケージソフトを導入するシステム開発業務を日本IBMに委託したが、作業が大幅に遅延したことから野村は開発を中止すると判断し、13年にIBMに契約解除を伝達。そして同年には野村が日本IBMを相手取り損害賠償を求めて提訴した一方、日本IBMも野村に未払い分の報酬が存在するとして約5億6000万円を請求する訴訟を起こし、21年に控訴審判決で野村は約1億1000万円の支払いを命じられた。

 前出・田中氏はいう。

「これまでに法的紛争に発展した日本IBMの事例をみると、自社が提案する製品・パッケージソフトに関するノウハウが不足しており、開発を進めていくと業務に合わないことが判明したといったケースが起きているように感じます」

 大手SIerのSEはいう。

「多額の損失が発生するような大規模システム開発を元請けベンダーとして引き受けることができる企業というのは、国内だと日本IBMや富士通、日立製作所、NTTデータ、アクセンチュア、金融関連システムだと野村総研など数えるほどしかなく、必然的にこれらの企業に案件は集中するので、失敗する大きな案件を担当するベンダーはこれらのうちのどれかになる可能性が高いということになります。また、日本企業のベンダーは、体質的に顧客から無理難題を押し付けられても、ある程度なら対応してしまうという傾向がありますが、外資系ベンダーは『それは契約外なのでできない』『追加費用がかかります』とドライな対応をする傾向があり、そうした点も今回のように裁判に発展する結果につながった可能性もあるかもしれません」

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

【関連記事】
初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?