100点を目指すのは当たり前
かつて宮崎駿監督に師事した経験を持つアニメーション・映像監督で大阪成蹊大学芸術学部長・教授の糸曽賢志氏はいう。
「あくまで想像ではありますが、私の知り得る鈴木Pの性格を考慮すると、まったく賛成できないものは貼らないでしょうから、書かれた内容に対して“肯定的(笑)”というのが正直なところではないでしょうか。ただ、『その通り』だと考えているとも解釈できますし、逆に『こういう内容をエラそうに貼っていると、誰も社員がついてこなくなる』と否定的な意味で貼っているとも解釈できるかもしれません。物事は表裏一体なので。
クリエイターとして個人的には、一緒に働く人にはアイディアを出してほしいと思いますし、一を言っただけで『そこまでやってくれるの?』と驚くレベルまでやってくれる人と働きたいと思うので、私自身はこの7カ条の内容に特に疑問は感じません。すぐに他人に頼ったり、やる気がない人とは私も働きたくはありません。ただ、その考えを人にも強要したいとは思いませんけどね。
かつて私は、ありがたいことに宮崎監督に師事する経験をさせていただいたので、宮崎監督の働き方や考え方に強い影響を受けているのは事実です。例えば一つのシーン演出を考えるのにカメラワークや演技の仕方など、それこそ無数に手法があったとします。何かひとつ面白いアイデアを考えついたら、すぐにそれを採用とするのでなく、大変かもしれないけれども時間の許す限り限界までアイデアを捨てて新しいアイデアを出し続け、考え得る全ての方法を描き、できる限り100点の出来ににじり寄る、それが当たり前だというのが宮崎監督の考え方だと思います。
実際に私が体験したお話をさせていただくと、ジブリ美術館で上映する短編映画などの企画を考えられていた時期に、ある少女漫画を原作とする映画をつくれないかと、その場にいた皆さんで議論してストーリーを広げているとき、私が提出したストーリーアイディアに対し宮崎監督は『イマイチ』とおっしゃったんです。私は宮崎監督と接することに多少慣れてきていたこともあり『お言葉ですが、これ絶対面白いですよ』というような反論じみたことを言ったのです。生意気ですよね。その後、1週間くらいたったある日、宮崎監督は私が話したそのストーリーを絵コンテに描いて私に見せてくれたのです。宮崎監督が描いた絵コンテなので演出の観点では素晴らしい内容ではありましたが、確かにアニメーションのストーリーとしてはあまり面白くありませんでした。宮崎監督は一人の演出志望の見習いが言ったことに対して、どうすれば自身で気づき、一番学びにつながるのかを必死に考え、自身で手を動かしてくださった。その姿勢を見て、本当に尊敬したし、誰に対しても常に必死にやることは当たり前なんだという考えをお持ちなのだと感じました。当の本人である私は、当時大ファンの宮崎監督が自分のストーリーを絵コンテにしてくれたことに舞い上がり過ぎて、その絵コンテを受け取った瞬間から全然宮崎監督のお話が頭に入ってこなかったのですが。もちろん、その絵コンテは今も私の宝物として大事に取ってあります。
ちなみに7カ条に書かれている遅刻については、宮崎監督は非常に厳しかった記憶があります。面接に遅刻してきた人に対して一言も質問せずに落としたという話は、落とされたご本人から半分笑い話として伺ったこともあります。今も大活躍されている方なんですけどね。。」
(文=Business Journal編集部、協力=糸曽賢志/アニメーション・映像監督)
提供元・Business Journal
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