一方で、「年を取ると涙もろくなる」という現象もよく知られています。
これは一見すると感受性が高まっているように見えるため、ゲームなどの体験に感動を覚えにくくなるという問題と矛盾しているように感じます。
ではなぜ、年齢が進むと映画や音楽に対してはより強い感動を覚えるのに、ゲームなどの娯楽には興味を失いやすくなるのでしょうか?
実際のところ研究では、加齢による涙もろさは、感受性が高まっているというポジティブな変化ではないと考えられています。
これは、単に感情の制御能力の低下である可能性が高いのです。
涙もろくなるのは、感情を司る扁桃体や前頭葉の変化によるものですが、特に前頭前野(PFC)の機能低下が影響を与えるとされています。
前頭前野は感情の抑制や意思決定を司る部分ですが、加齢によりこの機能が衰えることで、感情をコントロールする力が弱まり、結果として涙もろくなる現象が起こるのです。
そのため「加齢に伴い涙もろくなる」というのは、決して感受性が高まっているわけではなく、単に脳機能の衰えが原因と考えられるのです。
こうして年を取ると、簡単なことで涙を流して感動してしまう一方、ゲームなどの体験には脳が慣れてしまい期待が下がって退屈になるという状況を生んでしまうのです。
どうすれば「新鮮な感動」を取り戻せるのか?
繰り返される刺激に慣れてしまうの当たり前のことであり、年齢とともに報酬系が変化していくのは自然なことです。
では年を取ると、もうゲームを徹夜で楽しむというような体験は出来ないのでしょうか?
悲観的になってしまいますが、脳科学の研究では、こうした脳の変化は不可逆的というほど強固なものではないと考えられています。
そのため脳の可塑性(柔軟に適応する力)を活かせば、若い頃のような感動を取り戻すことも可能だと考えられています。
この変化に必要なことは次のようなものだとされています。
- 新しい体験を意識的に増やす:
- 未知のジャンルのゲームや新しい趣味に挑戦する。
- 過去にやったことのあるゲームでも、新しいプレイスタイルを試してみる。
- 運動を習慣化する:
- 軽い有酸素運動は脳の可塑性を高め、報酬系の活性化を助ける。
- 特にリズミカルな運動(ウォーキングやダンス)が効果的とされている。
- 生活リズムを整え、十分な睡眠を確保する:
- 睡眠不足は報酬系の働きを低下させ、快楽を感じにくくする要因となる。
- 規則正しい生活を送ることで、脳の健全な機能を維持する。
- 社会的なつながりを大切にする:
- 他人と共有することで、娯楽や体験がより楽しく感じられる。
- マルチプレイヤーゲームや協力プレイを活用するのも一つの方法。
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