認可されていない業者による新たな公害問題
EVバッテリーには希少金属が多く使われるため、使用済みバッテリーは重要な資源の「都市鉱山」として有望視されている。その半面、コバルトやニッケルなどは重金属であり、マンガンは土壌や水、空気を汚染する。電池を不適切に処理すれば、人体や地球環境に悪影響を及ぼすリスクも大きい。鶴原氏は中国における使用済みEVバッテリーの新たな公害問題について指摘する。
「非正規業者は零細企業で作業環境が劣悪なことも多い。粉砕したときに粉塵が空中に飛び散ったりすれば、環境に良くないし人体にも良くない。それから、BYDのバッテリーは分解しづらくてリサイクルしにくい構造になっている。日産リーフなどは、バッテリーの箱を開けると、中はいくつかの小箱になっており、それを開けると取り出せる。BYDは蓋を取ろうとしても取れない。中にブレードバッテリーが接着剤で張り合わせてあり、それが箱にもくっついている。電池自体を構造部材として使っている。ハンマーで叩いたりといった乱暴な方法でないと分解できない」
EVブームで急騰した中国での希少金属価格だが、それも長くは続かなかったという。
「価格高騰でバッテリー部品の供給企業が増えた。しかし、供給量に対してEVの生産台数はそれほど伸びなかった。結果として供給過剰になり、また部品価格が下がってしまった。認可されていない業者は採算悪化でますます環境に配慮することが難しくなった。倒産した会社もたくさんあるはずだ。採算が取れる状況になるまでバッテリーを分解せず待つ業者もあると見られるが、その場合バッテリー容器が劣化して、中の溶液が漏れたりする懸念もある。しかし実態はよくわからない」
中国では2018年からEVバッテリーのトレーサビリティ制度(背番号制)を導入しており、各流通段階において生産者やリユース事業者、リサイクル事業者等による政府への各種報告が義務付けられている。「ただ、罰則があるわけでもなく、実際に回収率の向上につながっているかは疑問」(鶴原氏)のが現実だ。