そのため、停戦となった後のウクライナの政治運営の見通しは、不透明だ。ある意味で、戦時中よりも複雑で困難な内政運営が要請されるだろう。

アメリカもロシアも、ウクライナで大統領選挙が実施された場合のシナリオを計算して、停戦交渉に臨むだろう。ゼレンスキー大統領の再選の可能性は低いと見れば、実質交渉を先送りにしても、ただウクライナに選挙をさせることを目的にした停戦を仕掛けてくるだろう。

戦争継続派と和平合意派の争いの構図が生まれてくると、ウクライナの社会的分裂は深まることになる。ウクライナの国内には、武装した勢力が大量に生まれている状態だ。分裂が、どのような政治情勢をもたらすかは、不透明である。

冷戦終焉後の世界では、「戦争が終わると大規模な復興支援が始まる」、といった見込みを、安易に自明の前提とする風潮が広まった。しかし内政上の不安を抱えるウクライナの戦後復興支援は、戦時中とは異なった特有の困難を抱える恐れがある。

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