MarkRubens/iStock

ヘグセス米国防長官が、ウクライナのNATO加盟を支持しない等と発言したことが、話題のようだ。だがヘグセス長官の発言内容は、トランプ大統領が大統領選挙戦中から一貫して説明してきた停戦斡旋の方針の内容にそったものだ。

欧米の主要メディアが、「トランプ政権成立の暁には、マイケル・ポンペオ氏などが重用され、ポンペオ氏がトランプ大統領を無視して今まで通りの政策を遂行してくれる」などといった根拠のない空想を、垂れ流していた。

それを受けて、日本の「専門家」たちも、トランプ政権ではポンペオ氏が重用されてウクライナがロシアを駆逐するまで軍事支援を増強する、といった話をまことしやかに垂れ流していた。「アメリカの有名メディアがそう言っている」ということだけが根拠だった。

「空想」には最初から根拠がなかった、ということだけを知っていれば、今さらヘグセス発言に驚くべき要素はない。

ウクライナの軍事行動は、アメリカの支援に大きく依存しており、アメリカ抜きで戦争を継続することは著しく難しい。仮に戦争を継続したとしても、失地が広がるだけである。現時点ですでにウクライナは劣勢が続いており、ロシア軍の支配地が拡大し続けている。停戦が果たされれば、軍事的状況からは、むしろウクライナの利益に合致する。

問題は、ゼレンスキー大統領の去就だ。ゼレンスキー大統領は、ウクライナの「勝利」に固執する余り、戒厳令を理由にして選挙の実施も延期し、戦時下の特別な大統領権限を行使し続けている。停戦となれば、選挙を実施しなければならない。再選は目指さないと発言したことがあるゼレンスキー大統領だが、出馬しない場合でも、あるいは翻意して出馬する場合でも、選挙に向けたウクライナの内政は、混乱が必至だ。

「ウクライナは勝たなければならない」の外野の声に乗っかって、「勝利(するまで戦争を続ける)」を至上命題のようにしてきてしまった。アメリカでトランプ氏の再選可能性が高いことや、欧州諸国でウクライナに懐疑的な右派勢力が次々と選挙で勝利を収めている状況を、冷静に観察して、停戦のタイミングを見極めることを、拒絶してきた。ザルジニー総司令官を更迭し、ロシア領クルスク州に侵攻する合理性を欠いた軍事行動をとってでも、自らが主導する形での戦争継続を追求してきた。