もちろん、このような話をタイミーが認識していないはずもなく、新規上場時の有価証券届出書では「事業等のリスク」の項目で法的規制について、「発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中」として明記されている。
競合の存在以上に法的規制の強化については影響が大きく、過去に日雇い派遣が半減した事を考えると、影響度を中と記載している点については認識が甘いと言わざるをえない。
実際にタイミーに闇バイトが登録されたこともある。掲載後に削除したものの、対応前にワーカーから応募があり、個人情報が登録者に渡った可能性があるという(参考:日本経済新聞 2024/11/14)。
厚生労働省は23年春に全国の仲介業者に対して求人情報の公開前に事前審査を求めており、競合のメルカリやディップはタイミーに先駆けて事前審査を行っていた。タイミーも12月6日に全件事前審査を行うなど不適切な求人の掲載に対する確認を強化するとの発表を行ったものの、競合に比べて後手に回っていると指摘でき、このあたりにも法的リスクへの対応の甘さが見える(参考:日本経済新聞 2024/11/14)。
タイミーは競争の激化に耐えられるのか?
タイミーは上場を果たしたとはいえ自己資本は前期決算の時点で約60億円と決して大きくはない。法的規制も含めた市場環境の激変に耐えられるか?と考えれば、後発のライバル企業となる大手が有利になる可能性は十分にある。
2024年の10月期通期決算では、累計売上高は対前年比は+66.5%の増加だが、当期に入ってから四半期ごと売上高はほぼ横ばいで、急成長に陰りが見えている。業績予想に対しても売上は未達であり、今後の成長スピードは鈍化するだろう。
先行者としての優位性はありながらも、決定的な競争優位の確立が困難な状況の中、タイミーの次の一手に期待したい。
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濵口 誠一 中小企業診断士 従業員2万名の企業から10名の企業まで、約20年経営企画に従事し1000件以上の事業計画を策定。現在は中小企業診断士として経営戦略から実行支援まで行う。言語化・数値化を得意とし「話しているだけで悩みが解決した」「目標が従業員に伝わるようになった」という評価多数。