アメリカ南西部は極端な環境と古代の伝承、そして今もなお語り継がれる神秘的な存在によって特徴づけられる地域である。この地にはかつて高度な文明を築いた人々が住んでいた。彼らは巨大な都市や断崖に作られた住居、さらには「キヴァ」と呼ばれる儀式用の地下構造物を残し、その痕跡は今もなお確認できる。彼らこそが「アナサジ族」だ。

 アナサジ族が築いた遺跡の中でも特に注目されるのが、アリゾナ州、ユタ州、コロラド州、ニューメキシコ州の四州が交差する「フォー・コーナーズ」と呼ばれる地域である。そこには彼らの偉大な文明の名残が色濃く残されている。彼らが消えてから久しい今も、この地には彼らの存在を感じるという者が多く、アナサジ族の精神が今も生き続けていると信じられている。

発見の経緯と驚異の建築技術

 1897年、放牧中に迷った牛を探していた一人の牧場主が、コロラド州の断崖で驚くべき発見をした。それは断崖に建てられた古代の住居跡だった。この発見を皮切りに、ユタ州やアリゾナ州でも次々と類似した遺跡が見つかり、考古学者たちを驚かせた。

 特に衝撃的だったのは、今では「プエブロ・ボニート」として知られる遺跡である。そこには650以上の部屋がある巨大な構造物が存在し、当時の建築技術の粋を集めたものであった。また、ニューメキシコ州のチャコ・キャニオンでは完璧な円形を描く300以上の巨大構造物が発見された。これらの壁には謎めいた壁画や象形文字が描かれており、その用途はいまだ解明されていない。

忽然と消えた“アナサジ族”の謎!不毛の地で栄えた謎多き文明とは
(画像=プエブロ・ボニート By Bob Adams, Albuquerque, NM – Self-photographed, CC BY-SA 3.0, Link,『TOCANA』より 引用)

 チャコ・キャニオンの発見はアメリカ考古学界にとって前例のないものであり、考古学者たちはこの遺跡の壮大さに圧倒された。発掘されたのは陶器や武器、工具、装飾品など、当時の高度な文明を物語る品々ばかりである。