昼間は仕事の予定が詰まっており、ドラッグストアに駆け込めたのは午後5時の閉店寸前の午後4時45分ごろでした。店は開いていましたが、商品を売ってもらえませんでした。
「もう帰る準備をしているから」
店員のこの一言に私は衝撃を受けました。営業時間内であっても、閉店準備のために販売を早めに終了するルールが徹底されていたのです。この経験を通じて「働く人の都合を優先する文化」に触れた気がしました。
労働省の官僚に聞いたところ、ドイツでは消費者が働く側に配慮することで、自らの働くものとしての権利が守られるという意識が定着していると話してくれました。
たしかに、ドイツでは日曜日や祝日にお店が閉まっているのが普通で、消費者はそれを当然のこととして受け入れています。それに比べると、日本は「消費者本位」の文化が非常に強く、24時間営業や年中無休のサービスが当たり前になっています。その背景には働く人々の負担があることを忘れてはなりません。
従業員の身だしなみの多様化に理解を求める張り紙を見て
あるスーパーでこんな張り紙を見かけたことがあります。
「従業員の身だしなみについて、当店では髪色、ピアス、ネイルの自由を認めています。ご理解いただけますようお願い申し上げます」
以前はお店のルールで髪色などの自由を認めていなかったのか、もしくはお客さんからのクレームに対応が必要だったのかもしれません。客が従業員のプライバシーに介入するとなると、もはやカスハラだと私は思います。
流通、飲食、医療現場、トラック輸送など、働き方改革が問題になっている業界が変わるかどうかは、消費者が働く側にどこまで配慮できるかによって決まってきます。
何でもドイツを見習えば良いと言っているわけではありません。日本のホスピタリティの高さは世界に誇れるものだと思います。コンビニで買い物をする時も、タクシーに乗る時も、親切丁寧に対応してくれる従業員の方々に心を打たれることが多々あります。彼らに感謝の気持ちを言葉にして伝えることで、サービスを提供する側もさらにやりがいを感じられるはずです。