アサド父子による独裁政権ではイスラム教の中でも少数宗派のアラウィ派が国内を統治してきた。シャラア氏はアサド失脚後、分裂した国の再統合を呼び掛け、「全ての民族、宗派は等しく公平に扱われるべきだ」と表明したが、ダマスコスからの情報では、同国の多くの少数派は新政権の報復を恐れているという。ドイツ民間ニュース専門局NTVは11日、少数派のアラウィ派の信者たちが大きな懸念を有しているという。一人のアラウィ派は「新政権は『アラウィ派は独裁者アサドを支援してきた』と考えているが、実際はそうではない。われわれも他の宗派と同様、様々な迫害を受けてきた」と述べている。
バチカンニュースは先月4日、「シリアの新しい指導者、フランシスコ教皇に深い敬意を表明」という見出しで、シリアの新政権が同国の少数宗派のキリスト教に理解を有していると報道したが、現地からの情報によると、キリスト信者たちはイスラム教徒から改宗を強いられ、女性のキリスト者は衣服問題でイスラム過激派からさまざまな嫌がらせや批判を受けたりしているという。
ちなみに、アサド政権の軍隊とその治安部隊は解散し、旧与党バース党は解散させられた。全ての武装集団、政治機関、民間機関は解散し、武装解除が実施されている。
13年に及ぶ内戦の後、多くの大都市で多数の家屋、時には町、村全体が破壊された。人口の大多数は貧困の中で暮らしている。シリアがどのような方向に発展していくのかはまだ分からない。アルカイダテロネットワークの分派であるアルヌスラ戦線から発生したHTSは米国や欧州連合(EU)などにテロ組織としてリストされている。
EUはアサド政権下で実施してきた対シリア制裁の一部解除する一方、ダマスカスの新統治者に対して依然、完全な信頼を寄せず、静観している状況が続いている。EU外交政策責任者のカジャ・カラス氏は「シリア情勢が悪化すれば制裁解除が覆される可能性もある」と付け加えている。アサド独裁政権の崩壊を受け、欧州ではシリア難民の国外追放と帰還に関する議論が始まっている。オーストリアを含む多くの国がシリア国民の亡命手続きを一時停止している。